「とてつもない」という言葉の意味を辞書でひくと「非常に度をはずれているさま」とある。いい状態、悪い状態の両方で用いられる。
麻生太郎首相は前者の方を好み、自著のタイトル(とてつもない日本)にも使うほどだ。読み直してみると、麻生首相はプラス思考の楽観論者であることがよく分かる。
特許取得率の高さや外貨準備高の多さ、犯罪発生率の低さなどを挙げ、日本はずば抜けた底力を備えた国だと強調する。少子高齢化や格差拡大などの課題については、悲観ばかりせず臨機応変に対策を講じていけばよいという。
こうした前向きな明るさが持ち味だったものの、最近の表情は一段とさえない。郵政民営化問題で小泉純一郎元首相から痛烈な批判を浴びた上、重要な国際会議での「もうろう会見」で中川昭一財務相が辞任したからだろう。
麻生首相にとって、とてつもないダブルパンチといえる。反転攻勢の機をうかがっているに違いないが、国会は手詰まり状態に陥っている。頼みの綱は昨日の日ロに続き、二十四日の日米首脳会談で外交成果を挙げることとされる。
確かに外交問題も大切だが、喫緊の課題は経済・雇用対策である。厳しい状況を打開するには、とてつもない指導力が必要だ。今の麻生首相にそれがあるとは思えない。