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発信箱:「何となく」と「無責任」=与良正男(論説室)

 「何となく」と「基本的には」と「いわゆる」が麻生太郎首相の口癖だ。いずれも物事をアバウトにくくり、具体論には踏み込まないといった時に使いたくなる言葉ではなかろうか。べらんめえ調で一見、強気そうだが、かねて私はそこに首相の自信のなさを感じてきた。

 特に気になるのは官僚が事前に用意したペーパーだけでは通用しない国会の委員会での答弁だ。あまり報道されないが、多少複雑な社会保障などの論議の際、首相は「基本的には……」などを連発して大ざっぱな答えはするが、具体的に突っ込まれると「あなたは何を聞こうとしているのか」と時におどおどした表情を見せることさえある。

 「基本」を外してくれなければいいとは思う。が、「どうも首相は政策そのものの理解度が足りないのでは」と、こちらも不安になってしまうのだ。

 先日、麻生首相は自民党の研修会であいさつし、自身を「何となく評判が悪い」と語ったそうだ。自虐ギャグのつもりかもしれないが、もちろん、もはやギャグにする時期は過ぎた。

 なぜ、評判が悪いのか。一番の理由は郵政民営化見直し発言を見るように自らの立場を忘れたような無責任さだと思う。

 「もうろう会見」で世界に醜態をさらした中川昭一氏もしかり。いや、「何となく人気がありそう」と麻生首相を選びながら、評判が悪くなると「私は賛成でなかった」とひょう変する自民党全体が著しく責任感を欠いているといえるかもしれぬ。

 今度の中川氏の辞任劇を見ると、政権自体がしどろもどろ状態。何となくではなく今の与党にはもう政権担当能力がないのでは、と私は思っている。

毎日新聞 2009年2月19日 0時00分

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