中川昭一財務・金融担当相が先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)後にもうろうとした状態で記者会見に臨んだ責任を取り、辞任した。中川氏は過去にも飲酒が原因とみられる失態を度々演じてきた。「百薬の長」とも言われる酒だが、酒に「飲まれない」ためのモラルと自己管理が必要だ。【山崎征克、和田憲二】
◆居酒屋では
18日夜。さいたま市浦和区の飲食店で酒を飲んでいた同区の自営業の男性(71)は「2世議員ばかり集まると危機管理がなされない。あの状態で会見させた周囲が悪い。とはいえ、酒を飲むにも場をわきまえないと」。
別の居酒屋にいた公務員の男性(56)は「会見を見たが、あの問答では辞めて当然」と赤い顔で話した。
◆県内でも…
県内の酒を巡る不祥事は、県立高教頭(当時)らによる修学旅行中の飲酒が記憶に新しい。県東部の高校の教諭4人が07年10月、大阪での修学旅行の巡回指導中にお好み焼き店で昼食を取った際にビールを飲み、08年11月になって減給や戒告処分となった。昨年3月には、県東部選出の県議が飲酒運転で検挙され、辞任した。同7月には、ふじみ野市の教育長(当時)が酔って男性に暴行したとして傷害容疑で書類送検され、辞任する事態に発展した。
◆人事に影響も
県人事課の担当者は「異動の際などに担当した仕事の履歴や人格など幅広い情報を勘案する」と言うものの、「そもそも仕事に差し障るほど飲酒する職員はいないはず」と、酒癖は評価項目にないと説明する。
しかし、「勤務中にめいてい状態なら、公務員として不適切。程度により懲戒処分の対象となる」と厳しい口調に。部長級以上ともなれば各種団体の賀詞交換会などで日中から飲酒する機会もあるが、担当者は「それだけの立場にある人は当然、分別をわきまえている」と話した。
◆酒の付き合い方
県酒造組合は昨年ごろから、利き酒会などの参加者に「体調を判断し、自己責任で利き酒をして」と呼びかけている。飲み過ぎて乱れたり、体調を崩す人がいるからだ。岸和雄事務局長は「合間に水を飲むなど、体調に配慮しながらお酒を楽しんでほしい」とマナーを説く。
一方、アルコール依存症に悩む人や家族からの相談を受ける社団法人「県断酒新生会」の荒木守理事長(64)は、中川氏の映像をテレビで見て、「政治家としてのプレッシャーから酒などに逃げてしまったのではないか。かわいそうだった」と同情的だ。
「ろれつの回らなさや目の感じから、専門機関で治療を受けた方がよいかも」と心配する。
毎日新聞 2009年2月19日 地方版