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【アリ?ナシ?】進まぬ少子化対策 マスコミの恥晒しが火に油を注いでいないか

2009年2月19日 8:15

深刻な少子化が問題視されているが、その原因は複雑に絡み合っている。先月厚生労働省は市区町村別の合計特殊出生率を発表したが、そこで最も低い数値となったのは意外にも東京・目黒区だった。



合計特殊出生率とは、女性が一生のうちに産む子どもの数の推計値である。これまで、少子化の主要因は「子どもを育てるにはお金がかかる」といった経済的な理由とされてきた。しかし、今回ワースト1位となる0.74人を記録したのは、目黒区だった。このほか、ワースト30のうち23を、東京23区と政令市の区が占める結果となった。

目黒区と言えば、高級住宅街が多く、夫婦の所得が他の区市町村と比べて比較的高い地域だ。それにもかかわらずこうした低い数値になったということには、経済的な問題以上に子どもが生まれにくい理由があるということだろう。

その主要因の一つとして考えられるのは、共働きの夫婦、とりわけ女性の側に「仕事か、育児か」の二者択一を迫られていることだ。

この国の風土は、まだまだ「女性は家庭に入って子育てを…」という考えが主流だ。政府は10年ほど前から男性の育児への積極参加を訴えるCMを作るなどしてPRに躍起だが、男性の育児への参加は依然進んでいない。皮肉にも、男性の育児参加を呼びかけるポスターに採用されたTRFのSAMは、数年後に安室奈美恵と離婚している。

一方、民間企業では「パパの日」や「社内キッズルーム」を設けるなど、積極的に育児を支援する企業も出てきている。

ところで、冒頭に紹介した「合計特殊出生率」の発表に関して、先月30日の石原慎太郎都知事の定例記者会見では、TBSの記者と石原知事による、実にお粗末なやり取りが繰り広げられた。

会見の冒頭で、TBS記者は「東京は、ある意味すごく少子化に貢献してしまっている」と、麻生首相もビックリの言葉遣いを露呈。即座に知事が「貢献はおかしいだろう」と指摘。一方で、石原知事も小笠原に出張した際のエピソードを披露するが、それは、小笠原に行ったら子どもがたくさんいたので、地元住民に『よかったな』と声をかけたら『夜は何もすることがないからね』と返された、という下世話な話だった。

無論、それ以外に少子化対策に関する真面目な話もしているのだが、翌朝の新聞の多くは、その「小笠原は…」の部分を取り上げていた。取り上げるマスコミも愚かだが、知事も自身の発言のどの部分が抜かれるかはある程度予測できたはずだ。これでは、お茶らけで終わってしまい、少子化への真っ当な議論へとはつながらないだろう。

中川前大臣の「もうろく会見」についても言えるが、大手新聞・テレビ記者はもう少し緊張感を持って臨めないのだろうか。記者の勉強不足と踏み込みの弱さ、そして問題意識の稀薄さによって、国民は知るべきを知れず、考えるべきを考える機会を奪われているのではないか。

(編集部 鈴木亮介)

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