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【主張】「かんぽの宿」白紙 入札経緯を徹底解明せよ
日本郵政が宿泊施設「かんぽの宿」などのオリックス不動産への一括譲渡契約を白紙にした。
オリックスへの譲渡は、純粋な競争入札ではなく企画提案の形式で行われていた。入札の最終段階で東京のスポーツ施設を売却対象から外したり、最後まで競っていた企業が入札から降りていたことなども明らかになった。こうした経緯を見る限り不自然な点が多く、白紙化は当然の流れなのだろう。
だが、白紙撤回で問題が解決したわけではない。譲渡先を改めて探すことになるが、今回の入札経緯に不明朗さを残したままでは、今後も国民の理解は得られまい。日本郵政と総務省には、引き続き疑念の解消が求められる。
日本郵政は、段ボール17箱に及ぶ入札資料を総務省に提出した。「官公庁の一般競争入札とは違うが、公正な手続きだった」と改めて主張した。これに対し、鳩山邦夫総務相は「言い訳のオンパレード」と批判した。もし不正があったなら、経営陣の責任問題に発展する。総務省は提出資料を徹底的に調べ、どの点が「言い訳」で、どんな問題があったのか具体的に指摘してもらいたい。
オリックスへの売却額が優良物件や首都圏の社宅9棟を含めて約109億円だったことに、「安すぎる」との批判も強い。日本郵政は専門家による検討委員会で売却価格を含めて適正な手続きだったかを検証し、今後の売却ルールをまとめる。総務省も独自に査定する。だが、今回は従業員の雇用維持を条件としたホテル事業としての契約だった。単なる不動産売却よりも相対的に安価になったことはやむを得まい。
この点を混同したままで適正な売却価格を計算することはできない。日本郵政は新たな譲渡先を探すにあたって、分割譲渡も検討するというが、今後もホテル事業として譲渡するのか、不動産売却なのかを整理する必要があろう。個別売却となれば時間や手間もかかる。物件によっては買い手が見つからないケースが出てくる可能性も忘れてはならない。
売り急ぎは慎むべきだが、まずは法律が定めた期限内の売却に向けて全力を尽くすことが筋だ。鳩山氏は「売らない選択肢」にも言及したが、官業による無駄を省くという郵政民営化の理念がねじ曲がってしまうような結果にしてはならない。