山田幸司のソウル奮闘記(「」の国での建築事情)
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※以下の文章は、2004年6月頃に某建築雑誌へ寄稿した際の下原稿です。本編では、かなりの部分がカットされています。


山田幸司のソウル奮闘記(「恨」:「
」の国での建築事情)

1.工事概要

 名称:(仮称)ソウルS
 場所:ソウル市カンナム区チョンダムドン
 工事種別:大規模リノベーション
 工期:3月から6月
 規模:
 予算:6000万程度
 施工会社:PAN建築デザイン
 用途:学校


2.進捗状況

 現場は、ソウル市カンナム区の「ソウルの表参道」と呼ばれるファッションストリートに面した6階建てファッションビルの4F,5Fだ。4Fは事務所、5Fは学校本体となっている。設計は、単に内装工事程度のものではなく、ワンフロアに1階建ての建築を作ってしまい、内部に外部「エクステリア」を生み出している。

 現在までの進捗状況は、内部の解体が終わり、具体的工事が始まりだしたというところだ。


 ちなみにクライアントは日韓JVだ。



3.「恨」:」の国でのカルチャーショック

 ソウルは今、さながら建設バブルといったところだ。そこらじゅうでビル建設が進行している。また、高層の建築も目立つ。ただ、建築の専門家である私にとっては、すべてが考えられない状況だ。まず、各現場の柱等、およそ建築的オーダーではない。細い。彼らからは「韓国には地震がないから大丈夫」との答えが必ず返ってくるが、かなり危険だ。工事も、日本人には到底受け入れられない程「荒い」。

 さて、当方の現場について書く。まず、韓国人は非常に誇り高き民族で、絶対に「できない」とは言わない。必ず「今の韓国にできないことは何もない」という。日本人が韓国の建築レベルの低さを心配するような発言をすると、もう抗議を受けることになる。で、実際はどうなのかというと、残念ながら日本ではなんでもないことができない。言っていることの理解すらできない。まったくもって始末が悪い。だからといって日本人が机をたたいて退席してしまえば、それでジ・エンドを迎えることになる。日本側がすべて妥協しなければ決して上手くいくことはないのだ。

 当初、私の提出した図面に対して、高さがぜんぜん間違っていると厳しい抗議を受けた。いただいた当該ビルの図面と照らし合わせても、明らかに私の図面に誤りが見当たらないため、改めて現場に行ってみると、すべてが分かった。いただいた図面の断面は5階建てなのに現場は6階建てだったのだ。そして、すべての階高が図面と違っていたのだ。さらに、図面では鉄骨造なのに現場はRC造だったのだ。あきらかに韓国事情が原因であったことが分かり、理不尽な言いがかりに対する抗議をして理解はしてもらったが、謝罪は絶対にない。彼らは何か問題が発生した場合、まず自分ではなく、まず相手のほうに問題があると考えるのだ。まいった。

 図面が5階建てなのに、現場は6階建てというような事態は、日常茶飯事であることも判明してきた。決してありえないレアなケースではないのだ。

 いずれにせよ、日本人が隣の国だからといって、気軽に喜び勇んでいくと大やけどをすることになるようだ。あの国は、日本とまったく違った国なのである。

4.竣工までの課題およびそれ以降の展望と課題

 いずれにせよ、工事は進行中だ。竣工までの課題も多々あるが、その前に工期について重要な話がある。実は、工事は8月までに竣工すれば十分なのである。が、韓国は儒教の国である。筆者もまだ十分に理解しきれていないのだが、韓国には、竣工やその後の祈願のための宗教儀式がある。日本の竣工式等と同様だ。けれど、その日程調整はまったく理解できない。儒教の偉いお坊さんに伺いを立てるのだが、そのお坊さんが「6月9日がよい」となると、6月8日までに竣工しなければならなくなってしまうのだ。この竣工儀式は絶対的らしく、そのための工期短縮に伴う設計変更さえ当然らしい。本末転倒のような気がするが、それが韓流だ。

 というような工期設定の問題はあるにせよ。とにかく竣工させなければならない。関係者は不眠不休の作業を行っているが、その過程で勝手な設計変更も多々行われている。設計者に対する配慮はあまりなされない。よほどのビックネームでもない限り、ただの日本人ということらしい。少なくとも私のケースでは。今回の仕事は若干アクロバティックで訳アリの面もあったが、それにしても日本的な監理業務は韓国では無理であろう。監理の鬼である筆者が言うので、ほぼ間違いないと思ってもらってよい。どうやら重要なのは、クオリティーの高さや建築の完璧さを期待してはならないということらしい。もともと建築は、俗物で妥協の産物である。改めてそのことを痛感させられた。ゆったりとした気持ちを持たなければ、撤退するのみだ。結果は当たるも八卦外れるも八卦ということか。乞うご期待?

 次に、今後の課題でもあるが、韓国での仕事を成功させるためには、日本人が韓国語を流暢に操らなければならない。韓国の多くの人は、日本語と英語にかなり精通している。そのため語学力に弱い日本人を少し馬鹿にしている面もある。仕事に関しての主導権をつかむためには、日本語や英語ではなく韓国語で話すことが重要だ。韓国語は日本人にとってはさほど難しくない。韓国語を少し話すだけでも日本人の意気込みや緊張感は伝わる。よその国で仕事をするのであるから、そのくらいは当然といえば当然といえる。


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