新卒医師に2年間義務づけられている臨床研修制度について、厚生労働省と文部科学省の合同検討会は18日、必修診療科を現行の7から5に減らし、実質1年に短縮できる案をまとめた。両省は省令改正など必要な手続きを行い、10年度実施を目指す。
研修医を専門医として早期育成し、地方で深刻な医師不足の解消につなげる狙い。だが、医師の基本的な診療能力を高めようと始まった制度の趣旨をゆがめると民間病院団体などは批判する。
同検討会がまとめた報告書では、必修は、内科(6カ月以上)と救急(3カ月以上)、地域医療(1カ月以上)の三つ。外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科の5科から2科を「選択必修」として研修する。その他は各病院の判断で弾力的にプログラムを作ることができる。
現行では7科・部門が必修のため、今より少ない診療科で基本的な研修を終えることが可能になる。一方、各病院が現行と同様に多数科を回るコースを作ることは認める。
また、報告書は、研修医が都市部に集中するのを避けるため、都道府県別や病院別に定員枠を設け、地域偏在を正す考えも示した。
臨床研修制度は、医師の臓器別の専門性が高まった一方、患者の体全体を診る力が足りないとの指摘を受け、04年から導入。だが研修先として都市部の民間病院に人気が集まり、大学病院で研修する新卒医師は実施前の7割から半分以下に減少。この影響で大学医局が若手医師を各病院に派遣する余力を失い、地域の医師不足を招いた、と批判され、制度変更を求める声が高まっていた。(野瀬輝彦、林敦彦)