日本時間二十三日に発表・授賞式がある米アカデミー賞のノミネート作品が発表された。滝田洋二郎監督の「おくりびと」が、外国語映画賞に候補入りしている。
葬儀の際に遺体をひつぎに納める仕事に就いた男性を主人公に、人間の尊厳や家族のきずなを描いた作品だ。人々の共感を呼び、本紙ちまた欄にも感動を伝える投稿が寄せられた。
半世紀前まで隆盛を誇った邦画は一九八六年以来、長くシェアで洋画の後(こう)塵(じん)を拝していた。しかし、二〇〇二年の27・1%を底として上昇に転じ、〇六年、二十一年ぶりで洋画を逆転した。〇八年はシェア59・5%を占め、大差がついた。
幼いころの怪獣映画も含め、多彩な邦画を見てきた者としては喜ばしい。こまやかな心の動きなどの表現では総じて邦画が勝るようだ。同じ日本人だから当たり前だが、素直に感情移入できる。
気掛かりは横ばい傾向の映画館入館者数。邦画と洋画を合わせ、このところ毎年一億六千万人台で推移している。見方を変えればハリウッド映画に代表される洋画の低迷で、観客が邦画にシフトしているだけという解釈も成り立つ。
邦画人気を映画人口の増大につなげたい。優れた作品の供給が続くことが肝心で、映画人の奮起が期待される。「おくりびと」が受賞すれば励みになろう。