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【経済】

経済政策遅れ懸念 与謝野氏ポスト集中 兼務、バランス難しく

2009年2月18日 朝刊

衆院予算委で自身の辞任を伝える新聞のコピーを見る中川財務相。左は与謝野経財相=17日午後

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 中川昭一財務相兼金融担当相が、ローマで醜態をさらした責任を取って辞任した。二〇〇九年度予算案の審議中という異例のタイミングでもあり、今後の経済・財政運営の波乱要因になるのは必至だ。〇八年十−十二月期の実質国内総生産(GDP)が、先進国中で最悪水準に落ち込み、雇用・景気対策は急務。後任の与謝野馨氏は、信頼回復、戦後最悪の状態にある日本経済浮上に向け、待ったなしの対応が求められる。 (東条仁史、吉田通夫)

 財務相が一日に二度、辞意表明、辞表提出の会見を立て続けに行った財務省内は、混乱に包まれた。幹部の間では「あんな映像が世界に流れたら(続投は)無理だ」という厳しい指摘がある一方、「景気を何とかしようという熱意はあった」と惜しむ声もあった。

 ただ、省内の反応とは無関係に、国際会議の記者会見でろれつが回らず、批判を浴びた中川氏の辞任劇は、目先の〇九年度予算案の審議への影響は避けられない。

 政府・与党はGDP急落を受け、追加の景気対策の検討に入ったが、予算審議が滞るようなら、議論を本格化できない。政府内からは「米国に比べ、政策決定のスピードが遅れる」(財務省幹部)という懸念が漏れる。

 また、中川氏の会見での様子が、海外メディアでも痛烈に批判されたこともあり「国際金融市場で日本の信頼感も低下した」(野村証券金融経済研究所の木内登英経済調査部長)ことも手痛い。

 今後、四月の第二回二十カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)など、金融安定化に向けた国際会議も続く。世界一体となって同時不況を乗り越えようという時に、日本の金融・財政運営の足元が揺らぎ続けたままなら、取り残される可能性さえある。

 例のない緊急時に、財務相・金融担当相を兼務する与謝野経済財政担当相は、麻生政権で経済政策の“司令塔”の役割を負ってきた。まさに財政と金融行政のトップを兼ねることで「永田町随一の政策通」(周辺筋)としての手腕が問われる場面を迎えた。ただ、各省庁の行司役である経財相と、国家の財布を預かる財務相を兼務することに対して「バランスの取り方が難しいのでは」(政府関係者)との声もある。

 与謝野氏は景気対策に力点を置くが、財政規律を重んじるだけに「当面は経済対策を優先させても、財政再建を言い出すのではないかと、市場の心理的な重しになる」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次主任研究員)という指摘もある。

追加経済対策に意欲 兼務就任会見で与謝野氏

 財務相と金融担当相を兼務することになった与謝野馨経済財政担当相は十七日夜に記者会見し、与党内で強まる追加経済対策の要求について「政府や経済界、学界、言論界など国民の意見を総合的に考えて判断する」と前向きな姿勢を見せた。

 与謝野氏は消費税の引き上げを提唱するなど財政再建の旗手とされ、市場では財政出動に慎重と見る向きもある。これに対し、与謝野氏は「状況に応じて適切な選択をする」と語った。

 財務相と金融担当相、経済財政担当相の三ポスト兼務は極めて異例だが、「体力は問題ない」と強調。「私の使命は経済危機にいかに立ち向かうかだ」と意欲を見せ、財源調達のための無利子国債発行などを検討する考えを示した。

財界『辞任やむなし』

 経済界は、中川昭一財務相兼金融担当相が先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)後の記者会見問題で辞任したことを「やむを得ない」と受け止めている。二〇〇九年度予算案の国会審議が遅れることや、麻生政権が一層弱体化することを心配する声もある。

 経済同友会の桜井正光代表幹事は十七日の記者会見で「辞任は妥当で、必要な判断だと思う」と述べた。麻生太郎首相の任命責任にも触れ「責任がないとは言えない」と指摘。支持率低下に悩む首相の立場は一段と苦しくなるとの見方を示した。

 今後の国会運営に関しては「与野党とも予算案などを迅速に採決してもらいたい」と語り、野党も審議に応じるよう注文した。

 日本商工会議所の岡村正会頭は「重要な国際会議で政策とは異なる話題が内外メディアの注目を集めたのは大変遺憾だ」と中川氏の記者会見を批判した。

 

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