元農水相の岩永峯一衆院議員(67)=自民、滋賀4区=の事務所担当者が宗教法人「神慈秀明会」(滋賀県甲賀市)から受け取った計6千万円を政治資金収支報告書に寄付として記載していなかった問題で、岩永氏が朝日新聞の取材に対し授受を否定した翌日に、同氏の事務所関係者が秀明会本部に現金を持参していたことが同会への取材でわかった。
秀明会によると、岩永氏の関係者が同会本部を訪れたのは今年1月28日。同日朝に同会事務局長に面会を申し入れる電話があり、事務局長は断ったが、夕方になって「岩永事務所の者」と名乗って数人が本部を訪ねてきた。関係者は「手渡したいものがある。書類だけなので預かってほしい」と言い、受付に紙袋を置いて立ち去ったという。あとで中身を確認すると紙に包まれた計3300万円の現金が入っていた。同会は弁護士を通じ、岩永氏側の銀行口座に振り込んで返却したという。
岩永氏は前日の1月27日夕に都内で朝日新聞記者の取材を受け、6千万円の授受について「献金は受けていない。まったくのウソ」「金が動いたことはない」と答えていた。
同29日から計3回にわたって、同氏の政策秘書を務める次男や地元秘書2人も取材に応じたが、「お願いの文書を送ったことがあるが、寄付はいただけなかった」「親族らが借り入れをしている事実もなかった」などと授受を一貫して否定していた。朝日新聞が岩永氏側に6千万円の授受について取材したのは1月27日が初めてだった。
岩永氏は2月16日の国会内での記者会見で、事務所担当者が秀明会から03年8月と05年9月に小切手で3千万円ずつ受け取っていたことは認めたが、「事務所担当者個人の借入金」「寄付ではない」と主張した。07年6月と今年1月に、秀明会に「弁済」として現金を返そうと試みたことにも触れたが、今年1月の「弁済」額が3300万円だったことや日付は明かしていなかった。秀明会は一貫して「個人に金を貸すことはありえず、6千万円は岩永氏が代表を務める政党支部への献金だった」としている。
秀明会本部への現金持ち込みについて、朝日新聞は17日、岩永氏の地元事務所に取材を申し入れ、事務所は「十分説明責任を果たしたところです。(16日に)説明したことが調査結果のすべてです」と書面で回答を寄せた。