2月17日(ブルームバーグ):7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G
7)閉幕後、もうろうとした状態で記者会見を行った責任を取って辞任
表明した中川昭一財務相兼金融担当相は17日夕、首相官邸で麻生太郎首
相に辞表を提出、受理された。中川氏が官邸で記者団に明らかにした。
これを受けて麻生首相は与謝野馨経済財政政策担当相を中川氏の後
任に充てることを決めた。首相が官邸で記者団に語った。支持率低迷に
苦しむ麻生政権にとって、重要閣僚の辞任は大きな打撃だ。首相は自ら
の判断について「体調などご本人が熟慮した上での決断だと思うので、
その意思を尊重したい」と指摘。与謝野氏を後任に選んだ理由について
は2009年度予算案が審議中であることを挙げた。
中川前財務金融相は辞表提出後、財務省内で記者会見し、辞任時期
を早めた理由について野党が参院に問責決議案を提出し、徹底抗戦の構
えを見せたことなどを挙げ、「予算・関連法案の1日も早い成立が困難に
なると判断した」と説明した。後任として兼務が決まった与謝野経済財
政政策担当相については「はるかに優秀で経験もある。非常に心強い」
との認識を示した。
中川前財務金融相は、前週末にローマで開かれたG7後の記者会見
でろれつの回らない状態で記者会見に臨み、各国のメディアで酷評され
た。野党は国際舞台で閣僚としての職責を十分果たすことができなかっ
たとして強く批判。民主党など野党は17日午後に参院へ財務金融相の問
責決議案を提出した。
問われる任命責任
昨年9月に発足した麻生政権での閣僚辞任は、組閣からわずか5日
目に辞任した中山成彬前国土交通相に続き2人目。首相の盟友で内閣の
要である中川財務金融相の辞任表明で、麻生首相が任命責任を問われる
のは必至の情勢。
自民党内では小泉純一郎元首相が12日夕、郵政民営化に関する麻生
首相の一連の発言について、「怒るというより、笑っちゃうくらい、ただ
ただあきれている」と述べ、痛烈に批判したばかり。これに盟友である
中川氏が辞任に追い込まれたことで首相をめぐる政治状況は厳しさを増
す。
政治評論家の浅川博忠氏は財務金融相の辞任表明について、「麻生政
権への影響は極めて大きい。首相の任命責任が野党から追及される。先
週の小泉発言で半ば死に体化した麻生首相がますます窮地に追い込まれ
る。結局、その先には、予算成立後に麻生退陣。麻生氏での解散はこれ
で完全に消えていったと見るべきだ」との見方を示した。
慶応大学の小林良彰教授は「問責を提出したら辞任、ということで、
民主党に判断を投げた。自ら辞任を表明することで、中川氏は自分を救
った。しかし、麻生総理は中川氏に対して辞任要求も厳しい叱責(しっ
せき)も行わなかったことによって、ダメージを受けた。安倍内閣より
も『お友達内閣』の印象を強くし、支持率を下げるだけだ」と語った。
続投宣言から一転
中川前財務金融相は同日午前の会見では、「体調が非常に優れず、関
係者に迷惑を掛けたことをおわびしたい」と謝罪。その上で、「与えられ
た仕事を一生懸命やっていくだけだ」と、続投する考えを示した。
その後、同日昼すぎの緊急会見では、国会で審議中の来年度予算・
関連法案と今年度2次補正予算関連法案が衆院を通過した後に、辞表を
提出する考えを明らかにしていたが、連立与党を組む公明党の北側一雄
幹事長が即時辞任を求める報道が伝わるなど、与野党内から即時辞任要
求が高まっていた。
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