夜のアメリカ村。大阪府警は近くクラブなどの実態を調査する(写真と本文は関係ありません)=16日夜、大阪・ミナミ、森井英二郎撮影
家宅捜索のため、大阪府警の捜査員に付き添われて自宅マンションに入る谷口将隆容疑者=16日午後2時32分、京都市東山区
その後も先輩に誘われ、何度か吸引した。「ぼーっとして、すべてがうまくいくみたいな感覚になった。試験や就職を怖いと思わなくなった」。春から金融関係の会社に勤めることが決まっている。不安を感じたらまた吸うかと聞くと、「どうだろう。わからないな」と言葉を濁した。
バーにいた大阪市のフリーターの男性(21)に声をかけると、「大麻を崇拝している。生き生きとしていられる」と熱弁をふるった。しかし法律を犯してまで吸う必要があるかと問うと、「正直言葉に詰まる」と話した。
アメ村のクラブで働いていたというマサシ(28)は、高校生の時遊び仲間と大麻を吸ってから常習者となり、大麻目的で海外へも行った。「クラブのトイレで吸っていた客も多かったが、何とも思わなかった」
数年前、突然自宅に麻薬捜査官が訪ねてきた。所持容疑での逮捕。2週間前には大麻仲間も逮捕されたという。「僕はもう懲りたけど、やってるやつらにも個人の自由がある。逮捕されるのも自己責任でしょう」
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大阪府警は、京大生の事件以外でも過去にアメリカ村周辺で大麻を売買したとの情報が寄せられたことから、近くクラブなどの詳しい実態調査を始める予定だ。
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1年間に大麻取締法違反容疑で逮捕されたり書類送検されたりした人数は、08年1〜11月末で過去最悪の2521人(警察庁調べ)を記録した。10年前に比べ2倍以上に増加。20代までの若者や少年が1582人で6割以上を占めている。
こうした傾向について、財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」(東京)の阿部俊三企画部長は、たばこより害が少ないといった間違った情報がインターネットなどで流れている▽暴力団が関与しているとのイメージが強い覚せい剤と違い、犯罪性の認識が薄い――と分析している。
大麻取締法では、栽培や売買などは禁じられているが、いずれも所持していることが前提で、過去に使用したことが判明しても罰則規定がない。
同センターによると、大麻は脳の中枢神経に影響を及ぼし、慢性的に摂取すると、徐々に幻覚や妄想が生じ、白血球が低下して免疫機能が低下。遺伝子に異常を来すこともあるという。阿部企画部長は「使用なども刑事罰が問えるよう、国で議論してほしい」と話す。