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こころの調剤:命守るために/2 重荷気付く「アンテナ」に /秋田

 風邪薬を買いに来る人。病院で処方された薬を受け取るため毎月訪れる人--。大仙市の薬局「すばる」を訪れる人はさまざまだ。

 自殺のリスクの高さが指摘されるうつ病だが、実際に精神科に通う人は少ないという。それでも体調が悪いと感じて、薬局には来ているかもしれない。

 誰でも気軽に足を運び、なじみの薬剤師がいる住民に身近な場。その窓口に立つ薬剤師の畠中岳さん(41)は、心に重荷を抱えた人々に気付く「アンテナ」になろうと心掛けた。

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 ふさぎ込んでいる人、顔色がすぐれない人にとにかく話しかけた。「今日はどうしましたか」。問いかけに最初は嫌がる人も多かったが、会話を重ねるうちにいつしか胸の中に秘めたものを語り始めた。

 負債に苦しむ人には多重債務の相談窓口を、診療が必要な人には精神科医を紹介することも。

 活動は口コミで広まり、畠中さんの携帯電話にも悩みの相談がしばしば寄せられるようになった。最初から薬以外の相談目的で、営業時間が終わるころ店の前で畠中さんを待っている人もいる。畠中さんは薬局と並行して、在宅医療の現場でも取り組みを始めた。

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 今のところ、同じように活動する仲間は少ない。薬剤師という立場で相談者の悩みをみな解決するのは難しく、焦りを感じることもある。

 経済問題に悩むある自営業者は、店に役場の職員が来るせいか相談をためらっていた。「こんな相談窓口もありますよ」と相談機関の一覧が掲載された分厚い冊子を渡すことしかできなかった。

 それでも悩みを相談する人は後を絶たない。「自分の力で解決してやろうと抱え込んじゃだめなんですよね。小さな気付きが重なり、相談者本人に気付いてもらって。結果的に自殺予防になればいい」

 気付くことしかできないかもしれない。でも、それこそが命を救う第一歩でもある。=つづく

毎日新聞 2009年2月18日 地方版

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