(1)人工関節
人工関節置換術は、主として股関節、膝関節が対象になります。痛みのない安定した歩行能力が獲得できます。大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術を含め年間約250件行っています。
2006年に、人工関節のプランをコンピューターで作成して手術に応用するナビゲーション手術が導入されました。この手技によって、より正確に人工関節の設置が可能になりました。また、2004年より低侵襲手術(MIS)を実践しています。筋肉などの組織を極力温存する手術で、術後の疼痛が少なく、リハビリテーション早期に開始できるため、入院期間の短縮、早期の社会復帰が可能になりました。また術創も従来と比較して小さいため(10cm程度)整容的にも喜ばれる手術です。低侵襲手術とナビゲーション手術の実践により、短期的にも長期的にも満足度の高い人工関節置換術が可能になりました。
(2)関節外来
人工関節以外の関節疾患は肩と膝を中心に、その多くを関節鏡(内視鏡)で治療しています。肩の痛みや運動障害を来たす腱板断裂、外傷に続発する反復性肩関節脱臼、膝の靭帯損傷、半月板損傷は、全例関節切開を行わない関節鏡での低侵襲手術が可能です。
(3)脊椎外科
頚椎から腰椎まで運動麻痺、痛み、しびれ、を訴える患者に対して手術を行っています。
脊髄や神経の対する操作は全例手術用顕微鏡を使用して行い、安全性の高い手術を実践しています。脊椎手術においても骨、筋肉を温存する低侵襲手術を導入しており、術後数日での退院も可能です。腰椎椎間板ヘルニアには、内視鏡による手術も適宜行っています。
不安定性のある脊椎に対しては、必要に応じて金属による内固定術を行ないます。脊椎を金属で固定する手術は難易度の高い手術ですが、この手技においてもナビゲーションシステムを活用して安全な手術を行っています。
(4)手の外科
手の外傷は、腱縫合や神経縫合、また切断指に対する再接着術も可能で、脊椎外科同様顕微鏡下に手術を多く行なっています。
慢性疾患では、リウマチ手の再建手術、手指関節の変形、末梢神経障害、その他特殊な病態に対してもより良い機能を回復すべく手術を行なっています。
(5)骨折
外傷外科は整形外科で大きな比重を占めており、多発外傷も他科と連携し積極的に受け入れています。
近年、高齢化社会が進み全身的合併症を有する患者の手術が増加していますが、総合病院である医療センターでは、専門科による全身管理が可能で他院からの手術依頼を数多く受け入れています。
骨折治療の進歩にも目覚ましいものがあります。以前は、長期のベッド上安静や長期間のギプス固定が主流でしたが、外科的治療により早期治癒、より良い機能回復が可能になりました。
(6)腫瘍外科
整形外科領域の悪性腫瘍は、数が極めて少なく一般病院では特殊な治療 の部類に入ります。当科では、京都大学の腫瘍グループと密に連絡を取りながら、極力患肢温存(切断しない治療)に努めています。
(7)小児整形外科
先天性股関節脱臼、側彎症など日進月歩治療の考えかたが変化しています。先天性般関節脱臼では、超音波やMRIを用いての3次元的病態把握により的確な診断治療が可能になっています。
(8)輸血の回避
自己血輸血(術前貯血、術中回収血など)を取り入れ、極力輸血(保存血輸血)を回避するよう心掛けています。 |