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時評コラム

猪瀬直樹の「眼からウロコ」

妊婦の「たらい回し」問題で改善案

受け入れ病院の調整役としてコーディネーターを配置する

 そのために、PTでは、コーディネーター制度の導入のあり方を提案した。一般の救命救急の場合は、救急車が受け入れ先を探しながら患者を搬送する。総合周産期センターの場合は、救急車は患者を運ぶだけであり、受け入れ先は、かかりつけの病院が探さなければならない。それでも決まらない場合は地域の総合周産期センターの担当医師が他のエリアの周産期センターを探す。しかし、医師はほかの患者も抱えており、日頃から受け入れ先と連絡を取り合うことが難しい。そこで、調整専任のコーディネーターを配置する。

 その際、情報共有を簡素化して、患者目線、国民目線での、シンプルだが確実な情報伝達を心がけることが必要だ。

 東京都の「たらい回し」問題では患者の症状について、「言った、言わない」という情報伝達の食い違いが生じていた。PTでは、事故直後に各病院に対して行われたヒアリングのメモを検証。その結果、病院間での連絡調整の際、情報の行き違いが頻発していることが明らかになった。伝達の精度をあげることで迅速化につながる。

 

 東京都では現在、総合周産期センターの受け入れ態勢について情報共有する「周産期医療情報システム」が導入されている。現行の情報システムは、受け入れ可能かどうかではなく、NICUや外科手術、心臓手術のベッドが空いているかどうかなど12項目もの入力欄がある。リアルタイム情報のはずが、煩雑なために1日2回しか更新されていない。結局、緊急時には電話で最初からすり合わせることになる。二度手間であり、迅速な対応のツールとして機能していない。

 コーディネーター制度については、札幌、神奈川、千葉、大阪という先行事例がある。僕が視察した札幌市夜間急病センターでは、助産師がコーディネーターとなり、受け入れ先を割り振っていた。

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