■自動再生防止が効果的
USBメモリやSDカードなど携帯型の外付けメモリを経由して感染する、コンピューターウイルスの被害が相次いでいる。こうした「USBメモリ感染型ウイルス」に感染した外付けメモリで、画像や文書を受け渡しすると、受け手のパソコンにもウイルスが感染するなど被害拡大の恐れがある。専門家は外付けメモリのウイルス対策を呼びかけている。(森本昌彦)
・ウイルスに感染したUSBメモリをパソコンに接続して開いた画面
≪新たな攻撃機能≫
「データの受け渡しのため、他人のUSBメモリを自分のパソコンに接続したら、ウイルスに感染した」
「パソコン教室のパソコンに自分のUSBメモリを接続してデータをコピーした。このUSBメモリを職場のパソコンに接続したら、ウイルスを検知した」
独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」に昨年、寄せられた届け出や相談の一部だ。IPAに届け出があった「オートラン」と呼ばれるUSBメモリ感染型ウイルスの数は、昨年8月の303件から、9月1万1722件、10月6万2555件、11月10万1090件と急増した。
12月には1万3105件、今年1月には555件と、オートランの検出数は減ったものの、オートラン以外にもUSBメモリなどから感染するウイルスが登場。従来型ウイルスでUSBメモリを経由して感染する能力を持ったものは少なかったが、オートランの攻撃能力が実証されたのに伴い、ウイルス作成者がこの機能を加え始めているとみられる。これまでに20種近くが確認され、今も増えている状況だという。
≪自動で隔離≫
USBメモリ感染型ウイルスが増える背景として、IPAセキュリティーセンターのウイルス・不正アクセス対策グループ主幹、加賀谷伸一郎さん(40)は「USBメモリなど外付けメモリの低価格化、大容量化が進み、気軽に使われているが、こうした外部記憶メディアのウイルス対策があまり意識されていない」ことを挙げる。
USBメモリなどからウイルスに感染したパソコンでは、ほかのウイルスを勝手にダウンロードさせられたり、オンラインゲームのIDやパスワードといったデータが盗まれたりするなどの被害が確認されている。今後はさらに別の症状が出る恐れもあるという。
では、被害に遭わないようにするためには、どうすればいいのか。手軽な対策として、保存するデータのウイルス感染の有無をチェックして、自動的に隔離する機能を持ったUSBメモリが発売されている。
昨年10月に発売したバッファロー(名古屋市)によると、USBメモリ感染型ウイルスの被害が広がったことで、反響は高いという。ただ実勢売価は容量1ギガのもので9100円ほど、同様機能を持つアイ・オー・データ機器(金沢市)のものも1ギガで5300円。未対策のUSBメモリが1ギガで1000円以下なのに比べ高価だ。
≪日ごろの更新を≫
別の防御策もある。
ウイルス対策などを手掛けるトレンドマイクロ(東京都渋谷区)の広報担当、鰆目(さわらめ)順介さん(25)は、パソコンの「shift」キーを押しながら、外付けメモリをパソコンに接続する方法を紹介する。こうすることで、外付けメモリ内のウイルスが自動再生することを防げるという。鰆目さんは「そのうえで、ウイルス対策ソフトでメモリ内がきれいかどうかを確認してほしい」と話す。
また、IPAの加賀谷さんは「Windowsや、ほかのソフトも日ごろからアップデート(更新)し、ウイルス対策ソフトを常に最新の状態にすることが必要。そして、USBメモリを安易に他人のパソコンに接続しないように」と呼びかけている。
【関連記事】
・
セキュリティーの“プロ”が交換ソフトで情報流出 IPA職員
・
サイバー攻撃で「北海道の停電可能」 露専門家が組織犯罪に警鐘
・
ディスコの半導体製造用精密切断装置 ウイルス防止ソフト搭載
・
新手口“押し売り”PCウイルス被害急増
・
警視庁PC数十台がウイルス感染、業務に支障も