中立的な事例分析を―産科補償制度
今年1月1日からスタートした「産科医療補償制度」の中で、脳性麻痺発症の原因分析などを行う「産科医療補償制度原因分析委員会」が2月18日、初会合を開いた。委員長に就任した日本産科婦人科学会の岡井崇常務理事は、「この制度が社会にとって良い制度として定着するためにも、この委員会が果たす役割は大きい。医療提供者の側をやみくもに非難することなく、中立的な立場で事例の分析を行っていかなくてはいけないと考えている」と述べた。
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同委員会では、まず下部組織である部会が、分娩機関から提出された診療録などや脳性麻痺児の家族からの情報に基づいて医学的観点から検証・分析を行い、原因分析報告書案を作成。その後、同委員会で正式な報告書を作成する。報告書は、家族と分娩機関に提出するとともに、一般にも情報公開する。
同委員会は今後、仮想事例を基にした原因分析のシミュレーションなどを行い、早ければ7月の会合で原因分析報告書の作成に入る予定。
18日の初会合では、部会が作成する原因分析報告書案の作成マニュアル案や情報収集のあり方などについて意見交換した。
部会は、「児・家族、国民、法律家などから見ても分かりやすく、信頼できる内容とする」「医学的評価に当たっては、検討すべき事象の発症時に視点を置き、その時点で行う妥当な分娩管理などは何かという観点で事例を分析する」などに留意して、▽原因分析報告書の位置付け・目的▽事例の概要▽脳性麻痺発症の原因▽臨床経過に関する医学的評価▽今後の産科医療向上のために検討すべき事項―の5項目から成る報告書案を作成する。
マニュアル案では、発症原因の分析に当たっては、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会監修の「産婦人科診療ガイドライン産科編」や、米国産婦人科学会(ACOG)特別委員会が定めた「脳性麻痺を起こすのに十分なほどの急性の分娩中の出来事を定義する診断基準」など、科学的エビデンスに基づいた資料を参考にするよう求めている。
臨床経過に関する医学的評価については、結果から診療行為を評価するのではなく、診療行為をした時点での判断に基づいて評価することや、当事者の責任の有無につながるような文言は極力避け、医学的判断の根拠やそのレベルを示す必要があるとした。また、診療録などと家族からの情報の内容が異なる場合は、それぞれの視点で分析・評価し、場合によっては両論併記とすることもあるとした。
弁護士の鈴木利廣委員はマニュアル案について、「医学の立場から見て、望ましくないことが行われたときに、当事者の責任につながる文言を避けると、少しバイアスの掛かった報告書と見られかねない」と指摘した。
また複数の委員から、報告書の情報公開時には、分娩機関名などが黒塗りされるのに対し、家族や分娩機関に渡されるものについては、こうした措置が取られないため、「家族がオープンにすることには規制がないのか」との疑問の声が上った。
「産科医療補償制度」は、分娩に伴い重度の脳性麻痺を発症した新生児やその家族に補償するとともに、原因分析や情報提供を行うことで、紛争の防止・早期解決や産科医療の質の向上を図ることを目的としている。補償額は、看護・介護を行う基盤整備のための準備一時金600万円と、毎年の補償分割金120万円が20回の計3000万円。
更新:2009/02/18 19:35 キャリアブレイン
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