国連本部(CNN) 国連薬物犯罪事務所(UNODC)はこのほど、世界各国の人身売買の現状や対策をまとめた報告書を発表した。最も多いケースは「性的搾取」で、全体の79%に上り、被害者の大半を女性が占めている。
報告書は、世界155カ国からのデータから作成された。UNODCのアントニオ・マリア・コスタ所長によると、女性による人身売買のケースも目立ち、性別のデータが得られた国の3分の1で、女性が男性を上回った。特に中米や東欧諸国では、人身売買事件で有罪となった犯人の6割を女性が占め、「女性が女性を売る」という構図が浮き彫りとなった。「被害者だった女性自身が人身売買を始めるという衝撃的な事例が後を絶たない。心理的、経済的背景や、強制された結果なのかどうかなどを調べる必要がある」と、同所長は話す。
性的搾取に次いで多かったのは強制労働で、全体の18%。実際にはこの数字を上回っているとみられ、世界的な経済危機を受けてさらに悪化する恐れがあるという。
報告では、売買の目的を問わず、被害者の2割近くが子どもであることも明らかになった。
人身売買をめぐっては、2008年に米国務省がまとめた報告で、アジアやアフリカから売られた被害者がクウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアなど中東諸国で強制労働に従事させられる傾向が指摘された。同報告では、ブラジルや中国、インドの経済成長が強制労働に支えられている実態も明らかになった。
国連では国際組織犯罪防止条約人身取引議定書が00年に採択され、03年に発効した。だがUNODCの報告は、アフリカなどで人身売買を取り締まる法的整備が遅れていると指摘し、政府による努力を呼び掛けた。