【ユジノサハリンスク(サハリン南部)=山浦一人】麻生首相は18日午前、日本の首相として戦後初めてロシア・サハリンを訪問し、メドベージェフ大統領と会談した。両首脳はロシアのプーチン首相の5月訪日で合意。北方領土問題について「我々の世代」の解決をめざして作業を加速することで一致した。
会談を終えた首相が説明した。領土問題では「新たな、独創的で型にはまらないアプローチ」が必要との認識でも一致したという。記者団に対して「向こうが2島、こっちが4島では進展しない」と、柔軟な対応の必要性を指摘。「この問題が引っかかっている間、日ロのいろいろな問題はすべてここに引っかかる。政治家で決断する以外に方法はない」と強調した。
今も外交に影響力を持つプーチン首相との5月の会談の機会も利用して、首脳レベルの意見交換を重ね、打開のきっかけをつかみたい考えだ。
経済分野では、12年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の会場となるロシア極東ウラジオストク近郊の島に架ける橋の建設に日本企業を参加させることでも合意したという。
首相は18日朝、チャーター機でサハリン入り。会談の冒頭、大統領は「近いうちにG20(金融サミット)がロンドンで開かれ、G8サミット(主要国首脳会議)も(イタリアで)開かれる。そこで個別会談を行う」と首脳会談を重ねていく考えを強調した。
これに対し首相は「ロシアはアジア太平洋地域の重要なパートナーだ。日ロの協力の象徴であるサハリン2(液化天然ガス〈LNG〉プラント)の稼働式典に参加できて大変喜ばしい。重要な一歩だ」と応じた。
首相は会談を前にロシア国営イタル・タス通信の書面インタビューに応じ、「大統領と真剣な議論を行い、領土問題の最終的な解決に向けた具体的な進展を達成したいと考えている」と意欲を示した。「日本は、アジア太平洋地域に目を向けるロシアにとっての『窓』になることができる」とも語った。
首相は首脳会談後、日本企業も開発に参加した「サハリン2」の開所式典に出席してあいさつし、LNG運搬船も視察。同日中に帰国する。