欧州・ロシア

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

パキスタン:武装勢力と和平協定 イスラム法導入容認

スワート地区の場所
スワート地区の場所

 【ニューデリー栗田慎一】パキスタン政府は16日、アフガニスタンの武装勢力タリバンと連携関係にある北西辺境州スワート地区の武装勢力と、和平協定の締結で合意した。政府が同地区にイスラム法の導入を認め、武装勢力は地区内での武力闘争を放棄する内容。パキスタン国内には和平歓迎のムードが強いが、停戦で武装勢力はアフガン入りしてタリバン支援に乗り出す可能性が高い。米国は反発を強め、パキスタンとの溝が深まりそうだ。

 スワート地区の武装勢力は、01年10月に米軍がアフガン攻撃を開始した後、反米闘争のためアフガンに約1万人のメンバーを送り込んだことで知られる。

 同地区での和平合意は昨年5月に続き2回目。前回は、米国の圧力を受けた政府がイスラム法導入の協定内容を守らなかったことなどから、同8月に破棄された。

 以来、双方の激しい戦闘が続き、学校や病院は閉鎖され、住民の生活は破綻(はたん)。昨年11月のインド・ムンバイ同時テロ事件後、政府軍はインドとの軍事的緊張を背景に戦闘部隊を縮小して劣勢となり、武装勢力が地区の9割を実効支配。住民は武装勢力支持へと傾いている。

 合意後にペシャワルで記者会見したアミール北西辺境州担当相は、「イスラム法の導入は地区住民の民意に従ったものだ」と強調。パキスタンの主要メディアも「住民の生活を守る最善策だ」(アージ・テレビ)などと合意を支持している。

 パキスタン政府幹部によると、アフガン駐留米軍による越境ミサイル攻撃が続くパキスタン側のアフガン国境地域では、家族や親類を失った住民が次々と反米勢力に参加し、国内治安も悪化した。

 政府は、オバマ米政権に「越境攻撃は逆効果だ」と停止を求め続けているが、16日にも米軍無人攻撃機による越境空爆があり、30人が死亡した。和平合意は、強硬姿勢を崩さないオバマ政権に対するパキスタン側の強い不信感を示した形だ。

 協定はザルダリ大統領が停戦状況を見極めた上で署名し、発効する。

 ◇ことば スワート地区

 渓谷美から「パキスタンのスイス」と呼ばれる一方、ガンダーラ仏教遺跡群でも知られ、90年代までは世界各地から観光客や仏教巡礼者を集めた。02年に始まったパキスタン軍の掃討作戦は同地区でも展開され、昨年までに観光ホテル405軒すべてが閉鎖もしくは破壊された。武装勢力は07年11月、ガンダーラ最大の石仏の顔面を爆破した。

毎日新聞 2009年2月17日 10時19分(最終更新 2月17日 10時59分)

検索:

欧州・ロシア アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報