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(7)産科医減少、小児科医不足

患者側の配慮も必要

 現在の医学生で、将来、産婦人科医を目指している人が激減しています。また、産婦人科医の中でもお産をやめたいと考えている医師は3割に上り、実際、産科をやめて婦人科に特化する医師も増えています。

 この背景には、お産は時を待たないために勤務が不規則で、分娩(ぶんべん)も正常分娩とは限らず、さらに医療訴訟などを起こされることも多いからです。

 その結果、お産のできる医療機関は減り、地方都市では里帰り出産ができなかったり、お産そのものができなかったりする自治体が増えています。

 妊婦さんの側でも、妊娠後に定期受診をせず、出産時に産科医のところへ駆け込むような危険な現象も起きており、奈良県で起きたたらい回し事件もそのような事例の一つです。

 医療側からすれば、手元に情報が何もないので医療事故が起きやすく、産後、医療機関に医療費が支払われない可能性もあり、敬遠されがちです。従って、妊娠したらきちんと産科医の定期健診を受けるべきです。

 一方、小児科医は全国的にみれば微増していますが、国民のニーズに応えるほど十分ではなく、過酷な勤務状態になっています。

 子供を持つ母親なら、専門医志向は当然です。しかし、診療所の小児科医は1人なので、24時間オープンすることはできません。このため、病院の小児科で診てもらおうとする傾向が強くなり、特に、夜間に集中している状況です。

 病院の小児科医は当直業務にも加わっており、入院の患者さんも診ています。小児科医自体も多くないので、翌日の通常勤務にも入らざるを得ません。こうした結果、医師は睡眠が十分に取れないだけでなく、休日が減るというしわ寄せがきています。

 子供は感冒などの軽症のケースが多く、初期は専門医でなくても十分に対応できます。日頃から小児科のかかりつけ医を持つことで、病院への夜間集中は避けられます。さらに、現在では行政や医師会が協力して電話相談も行っているので、それを利用するのも一つの方法です。

 小児科医を疲労の極みにさせるのではなく、入院中の重症患児の治療に専念できるような配慮をお願いします。

(川原弘久・偕行会グループ会長)

2009年2月17日  読売新聞)
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