【実況見聞】 病院の現場見た 市立奈良病院

朝日新聞が、奈良市立奈良病院の救急の現場についてレポートしている。


【実況見聞】 病院の現場見た 市立奈良病院
朝日新聞 2008年02月16日
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000170802160001





【実況見聞】 病院の現場見た 市立奈良病院
朝日新聞 2008年02月16日

◎緊急医療の危機ひしひし
 「市立奈良病院は救急患者を受け入れる間口が広いので心強いんです」。救急車に指示を出す奈良市消防局員がこんなことを言っていた。同病院は救急患者を受け入れている病院の中でも、「何でも診られる」総合診療を修めた医師が当直に立つ数少ない病院だからだ。そのためか同病院の救急患者の受け入れ数はここ数年増加中。だが、当直に一晩立ち会わせてもらうと、数字ではわからない「救急医療の危機」が見えてきた。

 ■休む間もなく次の患者

 救急医療機関は、軽症患者を診る「1次救急」、入院や手術が必要な患者を治療する「2次救急」、重篤患者に対応する「3次救急」とに分かれる。市立奈良病院は「2次」にあたる県内42救急病院の一つだ。

 2月6日午後5時半 病院に到着した。この日の当直医は総合診療科部長の西尾博至医師。40代前半の長身で、テレビドラマ「救命病棟24時」の主人公で俳優の江口洋介さんが扮した医師と重ね合わせてしまう・・。

 「まだ風邪の患者さんが1人来ただけですよ」。当直医は午後5時から翌朝8時半まで、正面玄関横の救急室で診療する。この病院で総合診療科の医師が当直するのは週3回。産科と小児科、精神科以外の救急搬送患者や夜間外来の急患すべてを1人で診るのだ。この日は堂原彰敏研修医も当直助手に入った。

 午後7時07分 西尾さんに電話がかかる。消防の指令課から「60代女性で、尿が出ず気分が悪いそうです」。女性が搬送されてきて治療が始まった。だが尿を出しても、腹部の痛みが治まらない。西尾さんはX線撮影と血液検査を堂原さんに指示した。

 午後8時 「消化管穿孔(せんこう)の疑いがあるな」。西尾さんがX線写真に写った肝臓表面の三日月形の黒い像を指す。「ここに漏れた空気がたまっている」。消化管に穴が開き、手術しないと命にかかわるかもしれない。「だが・・」。この日、通常の診療時間帯から手術がたて込み、手術室が埋まっていた。

 午後8時15分 「消化管穿孔で緊急オペが必要です。受け入れていただけますか」。西尾さんと堂原さんが手分けして、消化器外科の医師がいる2次救急病院へ問い合わせる。「満床で」「今晩の当直医は脳外科なので」――。なかなか受け入れ先が見つからない。ベッドの不足状況だけでなく単科医当直の問題点も垣間見えた。「なんで連絡つかんの・・」。患者の女性があえぐように言う。

 午後8時57分 4番目に交渉した市外の病院が受け入れ回答。「よかった!」。西尾さんがほっとした表情を見せた。そこへ休む間もなく目の下を切った2歳の女の子が入れ替わりに救急外来へやって来た。

 ■29時間に及ぶ連続勤務

 午後9時半 「さあ、飯は食える時に食わないと」。西尾さんが別棟の休憩室へ向かう。

 ついていって「なんで救急医になったのですか?」と尋ねると、「赤ひげ先生にあこがれて、へき地医療を目指していてね」。それなら、たいていの治療ができなければいけないと救急医療を選び、大阪などの救命救急センターに約10年間勤務したという。
 その西尾さんが2次救急の難しさを語る。「3次救急は『救命』が大命題だけど、2次救急で大切なのは確定診断をつけること。自分で完結治療できるか、他の専門医に託すべきか、迅速に判断しなきゃならない」

 そうか。2次救急は、患者の症状を判断して3次や他の2次病院へ振り分ける重要な役割も持っていたのだ。知らなかった。

 その後、午後10時から翌日午前5時ごろまでの間に、急性胃腸炎の30代の女性や腹部の痛みを訴える男性、ガラスで指を3センチほど切った女性らが相次いで訪れた。救急搬送には数えられないこうした人たちの多さに驚く。西尾さんは一人ひとり、ていねいに処置する。医師にしか分からない重大な症状が隠れているかもしれないからだ。

「この処置中に大けがの人が救急搬送されてきたら対応できるのかな」。見ていて心配になった。

 7日午前8時半 当直時間の終了間際。交通事故で顔にけがをした20代の女性が救急車で運ばれてきた。全治約1カ月の重傷。止血縫合処置に1時間かかった。この日の当直時間に受け入れたのは、救急搬送患者4人、自分で来院した急患7人。西尾さんの連続勤務時間は、前日の朝からこの日の昼まで約29時間におよんだ。

 西尾さんに市立奈良病院の救急受け入れ数が増えている理由を聞くと、「救急患者はいつでも誰でも受け入れる。救急医の当然の義務を果たしているだけですよ」と返ってきた。「でも医療訴訟を起こされるリスクが高いなか、自分の専門外の患者も診る医者は多くない」とも。総合診療医のいるこの病院へ特に患者が集中してしまうわけがよくわかった。

 この市立奈良病院に限らず、そもそも2次救急病院や救命救急センターには患者が集中しがちで問題になっている。県内には「1次救急」に休日夜間応急診療所や在宅開業医が14カ所、「2次」に救急病院42カ所、「3次」に救命救急センター3カ所があるのにだ。

 県医務課は「患者がより高度な医療を求めるようになった半面、医師不足で1次救急が十分に患者を受け入れることができていないため」とみる。治療の必要な人が適時に適切な病院に受け入れられるよう、開業医の協力体制を作るなど1次救急を充実させることが急務だと改めて思った。

 【市立奈良病院】 04年12月に国立病院機構から移譲され開設。総合診療科もその時できた。同科は「食欲不振」など一つの専門科では診断が難しい症状を診療する外来部門と、主に救急搬送患者を診療する救急専門部門「ER」からなり、専門の医師2人が在籍する。県医務課は「診療科を問わない総合診療が可能なERを持つ病院は県内でも珍しい」という。
 昨年5月には後期研修医2人も加わった。国立病院時代に1日平均1・6人だった救急搬送数は、06年度で同5・0人、07年度で6・3人と伸び続けている。


当直明けの午前8時半すぎ。交通事故で搬送されてきた女性の患部を止血縫合する西尾博至医師(中央)=いずれも奈良市東紀寺町1丁目の市立奈良病院で

つかの間の休憩時間に夕食をかき込む。入院患者用の食事と同じメニューなのでヘルシーだが、さすがに少し量は増やしてあるという


地域医療・自治体病院のマネジメント | コメント(2) | トラックバック(0)2008/02/17(日)17:35

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コメント

これまでは空想で記事?

病院の現場見たのが大発見だとするなら、これまでどうやって記事を書いてきたんでしょうね。
朝日新聞さん

救急外来の看板倒れとか、散々非難してたのに、取材もしていなかったってこと???

恥ずかしいと思うよ。日本のマスゴミは

2008/02/17(日)22:22| URL | Med_Law #LDi39ykw [ 編集]

今さらの感がありますが

>当直に一晩立ち会わせてもらうと、数字ではわからない「救急医療の危機」が見えてきた

同じく「それじゃ今までは現場を取材せずに記事かいとるんかい」と突っ込みたくなるところですが、今まで脳内妄想による机上の空論と「医師は悪者、患者は被害者」のステレオタイプな記事一色だったのが、短時間とはいえ悪の巣窟である医療の現場へ出向いたうえで正直な感想をレポートしている記者の真面目な姿勢は客観的に評価できると思います。
聞くところによると、新聞社内部で事実を事実として伝えたい記者魂のある人たちと、自分の思想をばらまくべくはじめに結論ありきのおよそジャーナリストとはいえない人たちが混在しているらしいので、ジャーナリストとしてあるべき姿勢をみせている人の記事が載るようになった点において朝日新聞は、依然悪意に満ちた医療バッシングに終始する某新聞紙よりは改善されているのかもしれません。マスコミには売れればよいといった大衆受けをねらった偏向記事ではなく、何が公益につながるのか冷静に分析された記事を載せてほしいものです。

2008/02/18(月)00:30| URL | しろふくろう #SFo5/nok [ 編集]

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プロフィール

元埼玉県庁の職員。 現在は埼玉県の坂戸市にある城西大学の経営学部の准教授で行政マネジメントを教えています。

伊関友伸

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