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医療クライシス:北海道緊急事態/5 縮小続く拠点病院 /北海道

 ◇公的サポート薄く

 ◇「使命」と「経営」のはざまで苦悩

 市立釧路総合病院(647床)や釧路赤十字病院(489床)などの大病院が集まる道東の医療拠点・釧路市。ここで20年以上、夜間・休日の救急医療を担ってきた釧路市医師会病院(126床)の運営から市医師会が撤退することになった。非営利の社団法人が運営する公的性格の強い病院だが、救急医療の負担に耐えきれず、医師不足の大波にのみ込まれた。

 同病院は85年12月設立。地域の医療機関と連携して入院患者の受け入れや救急医療を行う「地域医療支援病院」に指定されているほか、災害時の救急医療を担う協定を市と結ぶなど、公的役割を果たしてきた。06年度までは釧路市から救急医療負担金として毎年1億4700万円の補助を受けていたが、救急当直などの激務が敬遠され医師不足が深刻化。07年度からは救急医療の「拠点」を返上せざるを得なくなり、救急医療の3分の2をほかの病院が肩代わりするようになった。

 さらに収入の6割を占める循環器内科の医師が08年4月から2人に半減。09年3月末の累積債務が6億円に膨らむ見通しとなり、医師10人のうち8人が今春までに大学病院に引き揚げられることが決まった。医師不足が収入減につながり、さらなる医師不足を招く悪循環に市医師会の西池彰会長は「今後の医師確保の見通しが立たなくてはどうしようもなかった」と肩を落とす。

 病院経営の有力な譲渡先も見つからず、今年1月に行われた入札では西池会長自らが経営する医療法人が落札、経営を引き継ぐことになった。廃院という最悪の事態は回避されたが、現状通りの救急医療体制が維持できるかは不透明な状況。市からは病院存続へ向けたヒトやカネなどの公的支援は最後までなかった。

     ◇

 医療法第31条に基づく「公的医療機関」に位置づけられるのは自治体病院のほか、道内では「日本赤十字社」「恩賜財団済生会」「厚生農業協同組合連合会」「北海道社会事業協会」の4法人が25市町で運営する計32施設。医師会の運営する病院も公的性格を持ってはいるが、正式な公的医療機関には含まれない。

 公的医療機関はへき地医療や救急などの不採算部門を担うことで公的助成を受けているが、それでも道内22施設が赤字運営となっている。北海道社会事業協会の岩内協会病院(後志管内岩内町)では06年度以降、赤字決算が続き、07年度には常勤の内科医がゼロとなるなど医師不足も深刻だ。

 水谷保幸院長は「このまま赤字が続けば、近い将来、病院をやめざるを得ない」と危機感を強める。同協会の高橋透理事長は「責任と負担は自治体病院と同様に増大して倒れる寸前なのに、公的なサポートは手薄い」と訴える。

 地域医療の「社会的使命」と「経営」のはざまで苦しむ病院は多い。=次回は20日に掲載します

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 ◇道内の主な病院の診療休止・縮小◇

06年 4月 市立小樽病院      小児科入院休止

       道立紋別病院      精神科・神経科入院休止

    7月 小樽協会病院      消化器内科一時休止

    9月 根室市立病院      分べん休止

   10月 江別市立病院      内科一時休止

       道立羽幌病院      分べん休止

07年 1月 道立江差病院      分べん休止

    2月 釧路労災病院      小児科・産婦人科休止

    3月 羅臼町国保病院     救急外来停止

    4月 夕張市立病院      公設民営の診療所化

       日鋼記念病院(室蘭市) 産婦人科休止

       遠軽厚生病院      呼吸器科休止

08年 3月 北見赤十字病院     内科一時休止

    3月 日鋼記念病院      救命救急センター廃止

    4月 道立紋別病院      救急受け入れ態勢を縮小

       羅臼町国保病院     病床(48床)廃止、診療所化

毎日新聞 2009年2月18日 地方版

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