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産科診療所:「近くで子ども産める」 ティアラかまくら、受診希望者で盛況 /神奈川

 ◇赤字や訴訟時は市が支援

 鎌倉市に17日、全国初となる医師会運営の産科診療所「ティアラかまくら」がオープンした。妊婦の7割近くが市外で出産する現状改善のため、市と市医師会が約2年かけて開設にこぎ着けた。初日は開院前から受診希望者が訪れる盛況ぶり。継続的な運営には、医師確保や収支の安定など課題があるものの、全国的に減少が続く「産める場所」づくりの新たな試みとして注目を集めそうだ。【吉野正浩、五味香織】

 開設計画が本格化したのは07年春。市が医師会に「運営のノウハウがある」と設立を求めた。だが、約200人の医師会員からは「訴訟のリスクを誰が負うのか」「どうやって医師を確保するのか」と反対の声が上がった。福島・大野病院で、帝王切開手術中に女性が死亡し、執刀医が業務上過失致死などの罪に問われた事件(08年9月無罪確定)も危機感をあおった。

 市内では07年春に分娩(ぶんべん)を扱う医療機関が1カ所になった。当時、医師会副会長だった細谷明美会長らは「鎌倉に産める場所がないのは恥ずかしい」と、会員の説得に回った。運営費の赤字を市が補助し、訴訟の際も市が支援することで協議がまとまった。

 医師会員らの人脈をたどり、3人の常勤医師も確保できた。市は09年度予算案に、赤字分の補助金7700万円を計上した。将来的に分娩件数を増やすなど黒字化を目指す。市市民健康課は「周辺自治体でも分娩施設は減る一方。遅くなるほど深刻になる」と、赤字覚悟で開設に踏み切った経緯を説明する。

 開院初日の17日、3月20日に出産予定の同市の会社員、河井暁子さん(27)は「長男も市内で出産したが、検診は5時間待ちだった。近くで産めるのはありがたい」と笑顔を見せた。細谷会長は、順調な滑り出しに「ホッとした」と安堵(あんど)。石渡徳一市長は開院を喜びつつ「裁判などが起きなければよいが」とも話した。

 県産科婦人科医会の八十島唯一会長は診療所開設に「大変な戦力。成功すれば、他地域でも追随するのでは」と期待を寄せる。

毎日新聞 2009年2月18日 地方版

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