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【主張】中川財務相辞任 首相の統治能力問われる
ローマでの先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)後に、もうろうとした状態でろれつの回らない記者会見を行い、強く批判された中川昭一財務相兼金融担当相が辞任した。後任は与謝野馨経済財政担当相が兼務であたる。
中川氏は酩酊(めいてい)疑惑を否定し、風邪薬の飲みすぎが原因だと説明したが、国際会議出席に際して失態を演じ、それを世界に発信してしまった事実は変わらない。責任は重く、辞任は当然だろう。
中川氏は麻生太郎首相を支える側近の一人だ。その人物が首相の足を引っ張ること自体、内閣のたがの緩みを象徴していないか。政権全体に危機意識が欠落していると指摘せざるを得ない。
中川氏は農政や経済などに通じた政策通といわれる。東シナ海ガス田問題では経産相時代に日本企業に初めて試掘権を与えるなど、党内保守派の有力議員として注目を集めていた。
一方、閣議への遅刻など、飲酒が原因とみられる失敗が問題視されることもあった。G7という財務相としてもっとも重要な舞台で、首相の盟友でありながら国の信頼を失いかねない状況を招いた。単に健康管理の話では片付けられない。
中川氏が辞意を表明した会見では、予算案や予算関連法案の衆院通過後に辞任すると述べていたが、野党側は「条件付き」の辞意表明だとして強く反発し、多数を持つ参院に財務相の問責決議案を提出した。与党内にも、辞任するなら時間を置くべきではないとの意見が出ていた。
審議日程をめぐる与野党攻防と辞任問題が絡み合えば、混乱がさらに拡大するのは必至だ。政府・与党は予算案などの衆院通過を待たずに決着を図らざるを得なかったとみられる。
15日に中川氏の問題が拡大していながら、解決に3日間を要した。16日夜の段階で中川氏に続投を指示した麻生首相の判断も問われるだろう。
内閣支持率の下落傾向の背景にも、そうした指導力不足が指摘されている。今回も統治能力に大いに疑問の目が向けられていることを認識してほしい。
財務相の失態で野党は勢いづいたが、さらなる審議引き延ばし戦術は国民の批判を浴びよう。辞任を受けて、予算案や予算関連法案の審議を急ぐべきである。