日米関係は単に政権と政権との関係ではない。広いすそ野がある。双方で政治的党派を超え、この関係を深める必要がある。クリントン米国務長官の訪日は、そんなメッセージを発信したようにみえる。
クリントン氏は国務長官として初めての外国訪問にアジアを選んだ。オバマ政権の高官は既にバイデン副大統領が欧州、ミッチェル特使が中東、ホルブルック代表が南アジアを訪問した。クリントン長官のアジア訪問は役割分担の一環ではある。
クリントン氏自身は最初の訪問先に日本を選んだ点に象徴的な意味を込めた。24日の麻生太郎首相とオバマ大統領との首脳会談を東京で発表したのも同様である。麻生氏はオバマ氏を最初にホワイトハウスに訪ねる外国首脳になる。
日本の歴代政権は共和党政権に親近感があり、民主党政権には警戒感があった。オバマ政権はそれを意識したのだろう。北朝鮮拉致被害者の家族との面談も含め、窮地にある麻生政権に対する政治的な助け舟を出した。首相は官邸で夕食会を開いて返礼した。首脳間では普通だが、閣僚に対しては異例である。
夕食会を終えたクリントン氏は、小沢一郎民主党代表と会談した。日米関係が政権と政権だけの関係ではないとすれば、オバマ政権がもう一つの目で「麻生後」も見据えるのは当然である。
中曽根弘文外相とともに署名した沖縄海兵隊のグアム移転に関する協定にも同様の狙いがある。
自民党、共和党政権下の2006年5月、外務、防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で合意した在日米軍再編に関する合意を協定にまとめたものであり、日本政府は今国会に提出し、承認を得る考えである。日米間の政治的合意を国会審議を経て法的合意に格上げするのは適切である。
協定という名前の条約だから憲法61条により、国会の会期切れや衆院解散がない限り衆院の議決から30日後に国会の承認となり、参院で野党が多数を占める衆参ねじれ現象の影響を受けない。条約として発効すれば、衆院選挙の結果、民主党政権ができても、米側と交渉して改定しない限り、拘束される。