中川昭一財務相が7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議後にろれつが回らない状態で記者会見した問題の責任をとり、辞任する意向を表明した。野党が多数の参院で問責決議案が提出され、国会の予算審議に大きな影響が出ることが不可避になったためだ。世界的な経済危機のあおりを受け、国内景気が加速度的に悪化する中で、迷走を続ける麻生政権の現状は憂慮に堪えない。
G7後の会見での失態について中川財務相は「体調が悪く、風の薬を飲み過ぎたため」と釈明した。体調が悪かったとしたら同情すべき点もあるかもしれない。財務相は酒好きで有名であり、当人は否定しているが、アルコールが入っていたのではないかとの憶測も消えない。
日本の財務相として内外メディアの集まる記者会見で失態を演じ、日本の信用を傷つけた責任はやはり見逃すことはできない。閣僚として緊張感に欠けていたと批判されても仕方がない。
財務相は辞任の時期について「09年度予算案とその関連法案の衆院通過後」と述べた。国会日程や外交日程を考慮した結果とみられるが、すっきりしない辞め方である。財務相の辞任表明にもかかわらず、野党は参院に問責決議案を提出した。速やかに辞任した方がいい。
中川財務相は麻生首相と政治信条も近い盟友関係にあり、金融担当相も兼務する重要閣僚である。麻生政権は内閣支持率の低下にも歯止めがかからず、苦しい政権運営が続いている。予算審議の最中に中川財務相が辞任に追い込まれたことは大きな打撃である。
麻生政権は首相の郵政民営化見直しをめぐる発言を小泉元首相が痛烈に批判し、大きく動揺した。この小泉発言をきっかけにいったんは沈静化した与党内の「反麻生」の動きが再び強まる兆しも出ている。政権の立て直しは容易ではない。
国会は08年度第2次補正予算は成立したが、その関連法案はまだ成立していない。09年度予算案とその関連法案はまだ衆院で審議中である。首相の迷走発言や閣僚の失態、与党内のあつれきなどで予算審議が遅れる状況は極めて残念である。
つるべ落としのような景気の落ち込みはかつてない事態である。政治が景気の足を引っ張るようなことがあってはならない。まず予算を速やかに成立させ、追加景気対策の展望を開くために、麻生首相は小沢民主党代表との会談や話し合い解散も含めて何でもやるという断固たる意思を示すべきである。