原油価格下落にもかかわらず、産油国のインフラ・基礎産業投資計画の基本は変わっていない。安価な石油やガス資源を持つ中東湾岸諸国は、コスト競争力を利用し、景気後退を機に石油化学事業で主導権を握ろうとしている。ブラジルも石油化学事業に参入する計画を持つ。世界の石油化学業界は再編に向けて大きく動き出しそうだ。
ドバイではホテルなどの建設工事が中断するなど、一時の勢いは無い。だが、サウジアラビア、アブダビ、カタールなどのインフラや石油化学プラントの建設計画の大幅な見直しは行われていない。今回の景気後退で資材価格や労務費が下落し、建設コストは安くなっている。石油より相当に安価な天然ガスを原料とする石油化学製品の工場建設も計画されている。圧倒的なコスト競争力を持つ中東産油国は今回の景気後退を機に、欧米やアジアの石油化学製品市場でのシェア拡大を狙っている。最近大規模な海底油田が発見されたブラジルも、石油化学事業への参入を計画している。ロシア企業は資金不足のため、動きが鈍い。
日米欧の大手企業は中東産油国との石油化学事業の合弁計画を進めている。合弁事業に安い原料を供給してもらう代わりに、製造技術を提供する方式を使い、合弁会社は汎用品、自社は高付加価値品の生産に特化する戦略だ。
世界最大の天然ガス埋蔵量を持つロシアは、ガス版OPECの設立を提案した。長期契約主体の天然ガス取引にカルテルが可能かという疑問はあるが、最近のウクライナ経由欧州向けガス供給問題でも明らかになった供給国の強みを背景に、天然ガスの価格も値上げが志向され、産油・ガス国主導で業界再編が行われそうである。(皓)