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【産科医解体新書】(25)書類の多さにうんざり
医師の仕事は患者さんを診療するだけではありません。患者さんが出産一時金や保険金を受け取るための書類を書くのも、若手医師にとっては大事な仕事の一つ。1人で2、3枚の書類を持ってくる患者さんはざらにおり、忙しい業務の合間にこの書類を書くのは結構な負担にもなっています。ちなみに、大学病院などで中堅以上の医師は、この業務は慣例的に免除されています。なぜなら、他の書類を書くのに忙しいから。
当直明けで連続60時間勤務の後、フラフラで帰ろうとしていると、事務さんから付箋(ふせん)に「明日まで」と書かれた書類を渡されます。僕らは半分眠りながら書類を書き始めます。どれも同じようなものですが、量の多さに何度も書類を丸めて捨ててしまいたい衝動に駆られます。
常々思うのは、同じような保険なのに、どうして会社ごとに記入欄がバラバラの位置にあるのかということ。書式を統一してくれれば、同一の患者さんなら1枚書けば残りはコピーで対応できるのに。保険会社が保険金支払いを渋るために、わざとバラバラの書式にしているのではないかと思うほどです。
書類が提出された後、保険会社から「会って話がしたい」と電話がかかってくることがあります。患者さんの診療に手いっぱいで余裕がないときに、そんな電話がかかってくると、普段は「仏」と呼ばれる僕でもイラッとすることがあります。そこで、「何か保険がおりない理由でもあるのですか?」と不機嫌な声で言ってみたところ、「いえ、なんと書いてあるか確認したいので…」とすまなそうな返事。お会いして書類を見たら、確かに眠気と闘って書いた字は自分でも解読不能でした。
医師はやはり患者さんを診てなんぼの仕事だと思うのですが、大学病院ではペーパーワークが多過ぎるのも事実。今、大学病院での研修を希望しない医師が多いのも当然と思います。書類を書くために医師になったわけではないのですから。(産科医・ブロガー 田村正明)