グローバル化の波間に漂う 自民権力は崩壊過程
――細川政権から十年経過したが。
「僕が著書の『日本改造計画』で示した日本社会の問題点と提言は、今なお今日的課題だが、何一つ実現しなかったわけではない。小選挙区制度の実現は非自民連立政権の大きな功績だ。小選挙区制では、選ぶ方も選ばれる方も主張を鮮明にせざるを得ない。『カネのかからない制度』なんて小さなことではなく、日本人の意識改革をし、社会の仕組みも変える。そのスタートにしたいと推進した」
「その次のステップにかかろうとしたとき、社会党が自民党とくっつく前代未聞の出来事が起き、旧体制に戻ってしまった。自社は対立を見せかけて、地下茎でしっかり結び合った同体質。僕の不注意、思慮浅かったところを反省している。ただ、自民党権力体制は急速に崩壊の道をたどっている。政治的にも、連立なしではできなくなった。決して無駄な十年でも、失われた十年でもない」
「マスコミも日本人もせっかち。明治維新も黒船以来、十五年かかった。大きな権力を替えるのはそんなに簡単ではない。だが、日本自体の体力、国際情勢のスピードを見ると、あと五年はとても持たない。次の総選挙で政権交代を確定的にし、次の時代の仕組みを築かなくてはならない」
――冷戦構造崩壊のインパクトは。
「冷戦構造のおかげで日本は政治的コストを払うことなく経済活動に専念できた。しかしその崩壊で、個々の国家の主体的行動が問われる時代になった。その象徴的事件が湾岸戦争。僕は『自立国家として役割を果たせ』と主張したが、温室から抜け出せなかった。国民や政治家は今でも、グローバリゼーションの中で、どうしたらいいか分からず、波間に漂い続けている」
――自民党をどうみる。
「権力をとるためには手段を選ばない。あの執念というか、いいかげんさは権力闘争では学ばなければいけないね。選挙運動だけは一生懸命やる。『そこだけは自民党に学べ。風が吹かないなら走れ。そうすれば凧(たこ)は揚がる』と言っているんだ」
「小泉純一郎首相も権力保持のため(正義の味方の)月光仮面を演じているだけ。国民はそのスタイルにだまされている。首相は全部(旧)大蔵省の言う通りだ。これは首相だけではない。(自民党議員は)みんな、それぞれ役所や業界のひも付きだ」
――政権交代の受け皿を目指した新進党が解体した要因は。
「創価学会だ。見てごらん。(自民党の)野中広務元幹事長と仲が良かったと思ったら、今度は小泉首相とバッチリだ。そういうことが平気なんだろう。とにかく異質で、公明党はがっちりと固まる。とはいえ、政治的に学会を必要とする状況はそう長く続かないのではないか」
――小渕政権で自自連立を組んだ判断は。
「(自民党の連立要請に対し)安全保障の基本理念、補助金の廃止などを文書に明記して『こういう根本的な改革論をのむならいい』と(迫った)。自民党も観念してのんだと思ったが、一カ月もたつと、それがウソだと分かった。悔やんだが、何も残さなければ子どもの遊びだと思って粘り、政府委員制度を廃止し、副大臣制度も作った」
――あるべきリーダー像は。
「役人の言う通りなら首相もただのでくの坊。国民の意識が変わらないと駄目だが、僕に四年間任せてくれるなら、言っていることを全部実現してみせる」
――政界に小沢アレルギーも残っている。
「それは情緒論。政治の決定にそんなものは関係ない。僕の悪口を言っている人とでも目的が同じなら一緒にやるよ。でも現実には、情緒レベルの問題があることも分かるから、注意している」
――国民にはショックが必要か。
「『このままだと生活そのものが危うい』と思わないと。不満は持っているが、日本経済に今までの蓄積があり、円の価値は維持され、何となく食べていけるので、投票行動でノーを突き付ける踏ん切りがまだできない。しかし、自由、民主両党の合併を中心に野党が大同団結すれば、次の総選挙は絶対に勝てる」
(聞き手は共同通信編集委員 相馬芳勝) |
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