許されざるモノ

キクさんのナイフ

キクさんがど~しても載せてくれぇぇぇぇ、と言ってくるので、仕方なく載せました(笑

と言うのは、コレ、ロシアから受けた仕事なんですけど、国内ではまるっきり「違法」です。せっかく作っても展示することすら許されません。モッタイナイ話です。
日本政府は職人に技術の発表の場すらも与えないのか!
「技術立国」日本がこうした草の根的な技の習得、継承によって成り立ってきたのに、その事を忘れてしまったのか!!次の世代を担う若手職人(ナイフメイカーで働く若い人達とか)へ教えたいこと、伝えたいコト、がまだまだある・・・等々、口下手だけど言いたいコトは山ほどあるらしいのです。

それにしてもですね・・・

写真撮るのが難しいんですよ。

四面ハイポリッシュのピカピカダガーです。これぞダガー(短剣)なんです。四面を全て蛤刃で仕上げています。
ナイフの形状が割と地味なだけに、なかなか分かり難いのですが、これだけの面積をハイポリッシュにして、しかも歪みのない蛤刃に仕上げていくのは、もの凄い集中力が要るのでしょう。
それだけに仕上がったときの達成感たるや、端から見る者では想像し得ない世界なのかも知れません。

だけど国内では展示すら許されない・・・

ならばせめてこのスペースだけでも提供しよう・・・と。

ところが写真撮るのが難しいんですよ。

刃元から刃先へと淀みなく流れていく蛤刃のライン・・・コレがどうしても捉えられない・・・ああ、口惜しや・・・せめて持って帰ってスタジオセットで撮れれば・・・

まぁ辛うじて最後の画像で、雰囲気はちょっとは出たかな?と思うんですけど、どうですかね・・・敢えて周囲の写り込みを加えて、ブレイドの蛤刃ラインが分かるようにしてみたんですけど。

ステルス戦闘機のような不気味な迫力とでも申しましょうか・・・この小さな画像ではそこまで出し切れないので、実物を見たオイラとパソコン画面で見た(携帯の画面ならさらに小さいですし・・・)皆さんとでは、埋められない溝があるかも知れません。
刃長は40cmちょい。手に取れば震えるような感慨を覚えます。武器を手にしたときの興奮と責任感が入り交じった感覚です。目の前に居る人にスッと突き出せば、音もなく貫くでしょう。これぞまさしくサイレントウェポンです。
しかしこのダガーはこれからロシアへと旅立ち、彼の地で思いっきり豪華な装飾を施されます。ロシアでの人間国宝級の職人によって、豪華な拵えが与えられるそうなんです。
もちろん武器として使われることはありません。武器としての性能を備えた上で、最高の装飾を施しアートに昇華する・・・
アート系ナイフメイカーの皆さんが好んでダガーを作るのはそこなんだと思います。
もちろんダガーだけではなく、ラブレスファイティングのようなモデルでも同じコトかと。

日本刀だってそうです。いくら拵えが日本の伝統技術のカタマリだと言われてても、竹光ではアリガタミも値打ちもないですもんね。

こないだ磨いてたアレ

キクさんのナイフ

先日、キクさんが「新兵器」で磨いてたモノが仕上がってきました!

セレーション付きとセレーションなしがあるんですが、同じカタチなんですけどシノギ(この場合は背中側の削りのことを意味してます)部分の幅が違うんですね。シノギ幅の狭いところへセレーション刻むと、かなりキツキツのセレーションになってしまうんで、幅を変えて角度を予め出しておこう、ってワケですね。

フリーグラインドで角度も全て自由にコントロールしてるので、この辺のことは融通が利くんですよね・・・

ベルトグラインダーでジグ(治具)使ってやってる人は大変だと思います。

・・・ってこんなシノギの部分削る治具なんてどうやって調整するんだろ?

・・・と、ふと思ってしまいました。

今日はご来店のお客さんが多かったです。

ご来店のお客さんと、先日入荷した「鋼凛」シリーズなんかの出荷で、朝から夜7時前くらいまで、休憩取る間もないくらい忙しかったです。

毎日がこんな感じで忙しかったらイイんですけどね~♪

サスガ年末、って感じですね。

山下刃物の営業も残すところあと一日っす。

リマキリの意味・・・

キクさんのナイフ

昨日、リマキリという名前に改名されたことは書きましたが、ではその名前の意味は・・・と言う部分に触れずに終わってしまいました・・・

知らなかったわけではないですけど、ウロ覚えと言いますか、確証がなかったモンで、もう一回確かめてから書いた方がイイかなぁ~と思いまして。

でも、意味は意外に単純なモノでした。

アイヌ語で皮を剥ぐ、の意味なんだそうです。

そのまんまやん・・・

ま、でも中條さんがいつかその名に相応しい刃物が登場すれば、それにこの名を与えたいと思っていたモノですから、キクさんもさぞや喜んでいることでしょう。

でもスキニング(皮剥)だけを主眼においたナイフではなく、あくまでも幅広く使えるユーティリティーナイフですからね。
握りやすさとかちょうど良いサイズであるとか、結構考えられていますよ。

今のグリーンキャンバスマイカルタのハンドルは、繊維の目がシッカリしていて、握ったときとても良い感触ですし。

改名しました

キクさんのナイフ

北海道の著名なハンター、中條高明氏。
中條氏はナイフマガジン誌上でハンティングにまつわる記事を担当していることでお馴染みですが、その中條さん、あのハシナウカムイの生みの親であるワケなんですね。
中條氏のアイディアとキクさんの蛤刃の研削技術が、ピッタリ合って出来上がったと言うことなんです。

で、その後キクさんのナイフをかなり気に入っていろいろ試してくれているみたいなんですが、そのなかでベーシックなこのモデルに注目してくれました。

今までの名称はU3/ユーティリティー・スリー。
名前の通り、ユーティリティーモデルですが、ベースはハンティングモデルと言うことで、柔らかなブレイドラインを持ったセミスキナータイプです。

これがですね、かなり使い易いと気に入ってくれたようで、ゼヒこのナイフに「リマキリ」と言う名前を付けて欲しいと言われたんだそうです。

小型で使い易いナイフにいつかこの名称を付けたいと、言わば「取っておき」の名前だったんだそうで・・・

中條氏は北海道の大地に根ざしたハンティングを強く意識している人なのです。
北海道の大地と言えば切っても切り離せないのが、先住民であるアイヌ民族です。
彼らに敬意を表し、彼らの言葉で○○を意味する、とかの名称であろう事は想像に難くないワケで・・・

果たしてその名をリマキリとしワケは・・・

このナイフについては山下刃物店のWEBサイト☆松田菊男 作 リマキリを!

新兵器

キクさんのナイフ

いよいよ年の瀬も押し迫ってきました。
残すところあとわずかとなりましたが、モノ造りで生活している人たちには最後の追い込み時期とも言えます。
あと数日で熱処理屋さんなどが休みに入り、正月返上で仕事したくても出来ないと言う状況になります。
なので、この正月休み直前のこの時期、祝日といえど休んでいるわけにはいきません。

しかし、今シーズン、キク工房には「新兵器」が導入されました。

スピンドルマシンと言うそうです。

ペーパーの筒が回転しつつ上下し、指掛け穴の内側や、大きく弧を描いたラインなどの磨きに威力を発揮します。
そして、今キクさんが削っているのは「デスペラード・カランビット」です。

カランビットの穴と大きく曲線を描いた指掛けなど、まさにこのナイフのために導入したようなマシンです。

と言うわけで、このデスペラード・カランビット、年内間に合うでしょうか・・・

「削り」の職人

キクさんのナイフ

本日は予定通り、キクさんの「削り」についてご紹介します。

キクさんのナイフ造りの一番大きな特徴は「削り」です。鋼材を削って刃を形成する、と言う一番根本的な部分です。
それを支えているのは、キクさん独特の研削方法にあります。

過去のブログで何度かご紹介してきましたが、キクさんは主に「横車」-ヨコグルマ-と呼ばれる研削機械を使用します。
ちょっとナイフに詳しい方なら、ナイフメイキングならベルトグラインダー・・・なんて思い浮かべませんか?

それとは全く違う研削機械なんですよね・・・ヨコグルマというのは・・・

言葉で説明するよりも、ココは画像でご覧いただくのが一番だと思います。

回転するディスクの側面で削っています。

主に金属製のディスク(ブレイドの形状によっては凹凸のある木製のディスクを使うことも)の側面に、耐水ペーパーを貼り付けたモノを用います。
砥石が回転するグラインダーとも違います。

このヨコグルマを使うコトの利点は、金属製などのシッカリとした土台に貼り付けた耐水ペーパーを、研削面として使用するので、削るモノ、つまりナイフのブレイドの削り面もキレイな面を維持したまま削ることが出来る・・・

正直なところ見た印象を書くだけではなく、実際に体験したことを書きたいんですが・・・

なんせ、このディスクがもの凄い早さで回るんですよ。そして刃を当てていくときに、今どの辺りが接触いているのかが全くワカラナイ・・・

とても・・・怖いまいった顔汗

よくまぁこんなので削ってるな、って思います。

だけどキクさんが言うには、硬い面に当てて削るので、微妙なラインを出すことが出来るわけです。薄いブレイドに微妙な角度を付けて、削りの境目をビシッと出す・・・
ヨコグルマに慣れるまでは大変だけど、慣れてしまえばベルトグラインダーでは出せない削りが出来る・・・のだそうです。

しかし、どうやって角度なんてコントロールするのでしょう?

キクさんに聞いてみても、この道40年近く・・・なので、「感覚で」とか「もう、手が角度を覚えちょる」とかのコメントで説明になりません。この点はキクさん息子のマサユキに聞いてみました。

「当然、慣れの部分もあるけど、削り面は見えないので削っている時の音と、火花の出る量とかで判断する。」のだそうです。

なるほど・・・目と耳と指先の感覚でコントロールする・・・と言うわけですね。

ヨコグルマは、フラットや蛤刃のブレイドを削る時に用います。
最近、特に面白いなと感じているのが、キクさんが削る蛤刃です。
ベルトグラインダーで削る人はベルトのタワミを利用して、丸みを付けつつ削っていくのですが、ベルト面は回転しながら削るモノなので、タワミの部分は上下に揺れます。これが研削面にそのまま影響します。
なので、蛤刃と言うよりもダレた丸みのある刃になってしまうのです。
この点、キクさんの蛤刃は硬い研削面で削るので、キレイな面の蛤刃に仕上がります。

近頃ではアメリカでも蛤刃が一部のナイフメイカーの間でも流行で、ブレイドショウに出展した時にタクサンの人が興味深く見ていきます。
刃の厚みを残しつつ切れ味も出す・・・しかし、コレが結構厄介な削りなんだそうで・・・

高速で回転するディスクに、ウッカリしていると削っているモノを引っかけてしまって、飛ばしてしまうそうなんです。
これ、結構危険です。削り掛けでまだ刃が付いてないとはいえ、金属の塊が弾かれて飛んでくると、大怪我では済まない場合があります。
キレイな研削面を作るだけでなく、こうした事故を起こさないように製作を進めていく集中力というのはスゴイです。

リスクと引き替えに他の方法では出来ない研削面を得る・・・コレが職人の仕事なのかもしれません。

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