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オトコとオンナの事情・フランス編:第87回 サルコジ大統領の育休改革 母親の働き方に影響

セーヌ川沿いを散歩する市民
セーヌ川沿いを散歩する市民

 日曜日の昼下がり、セーヌ川沿いは散歩する家族連れやカップルであふれていた。この冬は、例年になく雪に見舞われたパリ。久しぶりに太陽の光を浴びながら、川沿いの歴史建造物を眺めながら歩いている。雑踏の中からため息交じりの会話が聞こえてきた。「経済の次は、家族政策の危機だ」

 会話の内容は、サルコジ大統領の育児休業制度の改革を指していた。大統領は、1985年にできたフランスの手厚い育児休業制度を「女性にとっても、家庭にとっても、社会にとっても、無駄」という表現をし、改革に乗り出そうとしている。

育休は子ども1人に最長3年
育休は子ども1人に最長3年

 フランスの育休制度は、1985年に始まる。現在の制度では、第一子から最長3年の休暇が認められている。支給される手当ては、最高で月額522ユーロ(約6万円)で、1人目の場合は6カ月間、2人目からは3年間もらえる。3人以上の子どもがいる場合、3年間休職して月額552ユーロを受け取るか、1年間だけ休んで月額790ユーロ(約9万円)を受け取るかを選択できる。

 2007年は57万人が育休制度を利用して休職した。両親のどちらかが取得できることになっているが、日本と同じで女性が多い。その数は98%に達する。すべての女性が希望して休職するのかと思ったが、現実は違うらしい。子どもを預ける場所が見つからず、やむを得ず休職して育児をしている女性が30%にのぼる。

 フランスの出生率は去年2.02に上昇し、複数の子どもがいる家庭は珍しくない。ベビーラッシュの裏側で、託児所不足は深刻な社会問題になっている。3歳以下の子どもは全国で240万人いるが、子どもを預ける施設は100万人分しかない。フランス人の友人たちは、「妊娠したら、すぐに病院と保育園の予約に走りなさい」と口をそろえて助言する。

育児休暇は短縮の方向へ
育児休暇は短縮の方向へ

 サルコジ大統領が「無駄」というのは、労働意欲があるのに休職を強いられている女性たちの現状を指している。大統領は、2012年までに新たに20万人分の託児施設を増やすと約束した。また、育休制度を短くする代わりに、労働時間の短縮などを検討したい。

 フランスが誇る家族制度が変わるかもしれない。年間80万人の女性が労働市場を離れている現状は改善されるかもしれない。しかし、子どもが3歳になるまで育児に専念したい人たちからはため息がもれる。この選択肢を失ってしまうのだろうか。

2009年2月17日

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