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2009年2月17日

◎GDP急落 頭が痛い政治の機能不全

 衆院で新年度予算審議が進んでいる中、政府・与党内で予算成立に引き続き大規模な追 加経済対策を新たに打ち出す動きが浮上してきた。昨年末からその必要性をめぐる論議はあったのだが、十六日発表された昨年十−十二月期の国内総生産(GDP)速報値が年率で12・7%の急落だったため、輸出、設備投資、個人消費の不振に歯止めを掛けることが避けられなくなったのである。

 当初予算の成立後では遅すぎる。野党の民主党が求めるように審議中の予算に急きょ織 り込む機敏さがほしいところだが、予算の修正には予算書の書き直しなど物理的に時間がかかる。形式的には補正だが、実質は当初予算に織り込みの経済対策にしてほしい。そう望みたいのだが、頭が痛いのは、政治が「ねじれ国会」で補正関連法案も、当初予算もままならぬ機能不全に陥っていることだ。

 米国に端を発した金融危機は一口で言えば金融工学による投資バブルの破たんであり、 日本の金融機関はそれほど行っていなかったため危機の直撃を免れ、当初は傷は浅いなどと楽観されていた。だが、金融危機が実体経済に波及し、米国の消費落ち込みによって日本でも自動車、電機など輸出製造分野が打撃を受けた。

 金融機関にしても株の含み益が資本に組み込まれているため、株価の下落で資本が棄損 し、貸しはがし・貸し渋りにつながって投資意欲の減退、失業増加となるなど実体経済の悪化を招いた。失業の増加への目配りも要る。

 こうなると、財政政策で需要を創出するしかないわけである。「日本でケインズ政策は 戦後初めて必要になった」との指摘もある。政治はこの実態に危機感をもって機動性を発揮してもらいたい。与野党の話し合いで景気対策を優先するのだ。米国のオバマ新政権は問題点もあるとはいえ、就任一カ月で金融安定化策や大規模な景気対策を軌道に乗せた。こうしたスピードは日本にも必要なのである。主要七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では財政出動などで対処する合意がなされた。長期的な視野で内需振興に踏み込み、産業構造の転換を進めたい。

◎七尾が学力向上対策へ 「学テ」生かす試みに期待

 七尾市教育委員会が新年度から全小中学校で国語や算数、数学などの学力向上対策プラ ンを実行する。

 小学六年生と中学三年生を対象にした昨年四月の全国学力・学習状況調査(全国学力テ スト)の結果から、苦手と考えられる問題点を導き出し、その弱い点を克服する対策である。全国学力テストの利用法の一つであり、試みが実を結ぶことを期待する。

 文部科学省は、全国学力テストの結果を都道府県レベルでしか公開していないが、それ でも問題点の把握は可能である。石川県内の公立学校では小六、中三とも国語、算数、数学の多くの分野の正答率が都道府県順位で一けた台に入った。七尾市教委によると、同市の正答率も全国平均を上回ったが、思考力、判断力、活用力の設問では「弱い」傾向が見られたため、昨年九月に小中の教諭や教頭らが弱い点を克服するための学力向上委員会を設立し、十二月に市教委へ学力向上対策プランを提言した。

 新年度からの取り組みはこの提言に基づいて始まるが、たとえば「ノートに自分の考え を書く欄」を設けて表現させ、この積み重ねによって学力を身に付けさせるなど、具体的な提言になっている。

 学校教育法三十七条で、授業の運用や編成は学校長の裁量とされており、学校ごとに授 業の工夫が行われている。そのため七尾市のような市ぐるみの取り組みとなると、まだ少ないようである。

 七尾市に先立ち羽咋市が全国学力テストが始まる前の二〇〇五年度から教育活性化プラ ンを全小中で進めているのが注目される。七尾市の取り組みは、この羽咋市の試みをも参考にしたそうである。

 羽咋市の場合、一年間の成果を公開授業で示すことにしている。七尾市も結果の公開を 目指してもらいたい。児童生徒の学力向上の取り組みを開かれたものにし、同時に教える側の相互研さんが深まれば、問題点のありかがよく見えるようになるだろう。

 こうした地域ぐるみの実践がさらに広がっていくことによって全国学力テストの意義も 深まるはずと考えたい。


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