GDP大幅減:財政出動、圧力強まる 問われる成長戦略

2009年2月16日 21時58分 更新:2月16日 23時15分

実質GDP成長率の推移
実質GDP成長率の推移

 08年10~12月期の国内総生産(GDP)の実質成長率が歴史的な落ち込みとなり、政府・与党は景気底割れ回避に新たな追加経済対策の策定を迫られることになった。日本経済の成長基盤だった輸出が総崩れとなり、外需頼みの経済構造を転換することが求められている格好だが、追加策は90年代のような「痛み止め」や選挙目当てのバラマキに終わり、「財政赤字を増やすだけ」(アナリスト)との警戒感も強まってきた。

 政府は昨夏以降3回にわたり、事業規模総額75兆円の経済対策を打ち出し、08年度の1次補正、2次補正、09年度当初予算を「景気刺激の3段ロケット」(麻生太郎首相)と位置づけ、総額12兆円の財政支出を計上した。

 しかし、大和総研の試算によると、2兆円の定額給付金の大半が貯蓄に回ると見られるなど、政策効率の悪さもあって、一連の経済対策がすべて実行されても、GDP押し上げ効果はわずかに1%程度にとどまる見込みだ。

 政府は中小企業の資金繰り対策の資金枠30兆円まで拡大するなど金融安定化の努力もアピールするが、今の日本経済は「貸し渋りだけが問題なのではなく、輸出急減で企業活動そのものが縮小する危機的な状況」(経済官庁幹部)だ。財政出動で需要の急激な落ち込みを少しでも埋め合わせなければ、企業倒産や失業が一気に広がる懸念がある。

 「痛み止め」だけでは不十分で、成長力を高める政策が必要だが、与党内の議論は「規模は20兆円超」(幹部)など、追加財政出動の規模に集中。中身については後回しの状態だ。環境投資を増やす日本版グリーンニューディール政策や羽田空港拡張の前倒し工事などは、効果を上げるのに時間がかかることもあり、結局は「手っ取り早い従来型公共事業に多くのカネがばらまかれるのでは」との懸念が指摘されている。バラマキ型の公共事業が一時的な雇用創出につながっても景気を持続的に持ち上げる効果がないことは小渕政権時代の失敗で証明済みだ。

 与党内では次期衆院選もにらみ、「赤字国債を増発してでも20兆~30兆円に追加対策を」との声が高まる。将来の成長戦略が伴わない財政出動では、先進国で最悪の財政状況をさらに悪化させる。【清水憲司】

 ◇「30兆円規模の対策必要」野口悠紀雄・早大院教授

 日本の景気後退が深刻化したのは、米国の住宅・消費バブル、日本の円安バブル、輸出バブルなど世界的なバブルが同時崩壊したためだ。日本は02~07年の景気拡大期に、輸出から輸入を引いた純輸出が国内総生産(GDP)に占める割合が大きく伸びた。国内の設備投資も拡大したが、世界的なバブルに依存した成長構造だった。

 米消費バブルなどが同時に崩壊すれば急激な反動減に見舞われるのは必然で、最終的に日本のGDPは累計で10%縮小、02年の水準まで戻ると見ている。今や輸出製造業の期待成長率はゼロで、悪夢のような話だ。

 生産・雇用調整の一段の加速で完全失業率は6%くらいまで上昇する懸念があるが、日本はそんな社会不安を甘受できない。今こそ有効需要を創出するケインズ政策を取るべきで、経済の落ち込みを和らげるには政府は国債発行額を2倍にしても30兆円規模の財政出動をすべきだ。

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