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かながわ瓦版/安心お産地域連携
- 2009/02/17
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開業医と一貫態勢へ
鎌倉市の支援を受けた市医師会の産科診療所「ティアラかまくら」が十七日、診察を開始する。周産期医療を取り巻く厳しい状況の改善へ、市と医師会が選んだのは全国的にも珍しい医師会立だった。理想とするのは、地域の開業医との病診連携を図っていくシステム。健診から出産まで一貫した対応も可能で今後の運用が注目される。
鎌倉市の井上彰子さんは今春、二人目の子供の出産を予定している。長女の際は、市内の開業医に約半年健診を受けた後、実家のある東京・八王子に里帰りし、出産した。今回の出産はティアラを希望している。
「ずっと診てくれた先生が近くにいるのは安心」と井上さん。「出産時に何かあったら僕も飛んでいく」。開業医のその一言がありがたかったという。
京都府出身の中丸敦代さんも同様のパターンで三人目を出産する。「知っている先生が設立に携わった診療所。安心感がある」
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鎌倉市では、二十年前に十五あったお産施設が二〇〇六年には一施設に。年間千二百人ほどが誕生している中、七割が市外での出産だ。お産を扱わない開業医にとって、健診後の患者の出産場探しだけでも一苦労。ゆかりのない遠方の施設の場合は、出産に立ち会うことも難しい。
ティアラの開設でそんな状況は改善する。医師会産婦人科医会は「自分たちがつくった施設なので立ち会いも気軽に頼める」。
診療所側にもメリットはある。急患が相次ぐなど人手不足の際には、付き添った開業医が戦力となる。地域の人的資源を効率よく活用できる格好だ。
ティアラの雨森良彦院長は「医師会の皆さんで守り育てていく診療所。医師同士、知識や技術を磨く場にもなる」と相乗効果に期待を寄せる。
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もちろん課題はある。まずは常勤医の確保。経営面でも永続的な市の助成金頼みに理解が得られるかは不明だ。医師会立のティアラに健診患者が流れれば、会員の開業医には患者減となるジレンマも抱えている。
産婦人科医会の矢内原巧会長は「市民のためを考えた。税金を投入する意義もそこにある。初期の健診は開業医で、お産はティアラでと分業制的な形にしていければ」と話している。
◆鎌倉市医師会立産科診療所 同市中心部の旧デイケア施設を改修。ベッド数は8床。医師3人、助産師9人、看護師3人が常勤する。2008年度の市からの助成額は約3億円の見込み。2月中は外来診療や妊婦健診のみ受け付け、3月から分娩(ぶんべん)を開始。09年度は300件、10年度以降は360件の取り扱いを目指す。