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【社説】

中川財務相 国をおとしめる醜態だ

2009年2月17日

 まさにただただあきれる醜態である。ろれつが回らずしどろもどろだった中川財務相のG7会見。これまでも演説読み間違えなどの問題を起こしている。経済の危急時に司令塔役を任せられるのか。

 国際会議で日本の閣僚が脚光を浴びることは本来歓迎すべきことだろう。しかし、ローマで開かれた先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に出席した中川昭一財務相は「冷笑」の対象として世界中にニュースを発信してしまった。国をおとしめるような話だ。

 G7後の記者会見での中川氏の表情はテレビ映像を見ても明らかに異様だった。終始眠たそうで、ろれつが回らず、質疑もかみあわなかった。日本だけでなく、海外メディアも皮肉まじりに「深酒」「居眠り」疑惑を報じた。

 中川氏は「風邪薬と酒をローマに向かう飛行機の中で飲んだ。その相乗効果で誤解を招いたのは事実だ。申し訳ない」と陳謝した。

 今回のG7は、各国に保護主義が台頭する危機的状況の中、対応策を真剣に討議する場だった。仮に薬が原因だとしても、冷静な判断力が働かないような状況で参加するとは不注意が過ぎる。緊張感のかけらも感じられない。

 国際的に信用を失った痛手は大きい。二十二日には東南アジア諸国連合(ASEAN)などとの財務相会合がタイである。こんな調子で大丈夫なのか。

 中川氏の失態は今回だけではない。先月の衆院本会議での財政演説で「歳入」を「歳出」と読むなど二十六カ所で読み間違えがあった。かつては蔵相失言をきっかけに昭和金融恐慌が起きたこともある。市場の動向などに重大な影響を与える財務相の発言は、慎重な上にも慎重であるべきだ。

 野党側は麻生太郎首相に中川氏の罷免を求めている。自民内にも更迭論がある。二〇〇九年度予算案審議の責任者の資質を疑問視せざるを得ないのは残念なことだ。

 中川氏に限らず、内閣全体に弛緩(しかん)した空気が漂っているのは問題だ。首相自ら郵政民営化などで迷走発言を繰り返すようでは閣僚に示しがつかない。

 忘れてもらっては困るのは、首相が言うように「百年に一度の経済危機」なのである。二〇〇八年十−十二月期の実質国内総生産(GDP)は記録的な下落幅となった。失態を続けている場合ではあるまい。中川氏が国会で「深酒疑惑」の釈明に追われる光景は、あまりにも情けない。

 

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