日本の成長率が急落した。政府は金融危機の日本への影響を「軽微」としてきたが、認識が甘かったようだ。新年度予算案が成立していない段階ではあるが、追加景気対策を視野に入れるべきだ。
昨年十−十二月期の実質成長率は年率換算で前期比12・7%のマイナスになった。実額で年率換算すれば、約七十五兆円もの付加価値が失われた計算になる。
これまで日本経済をけん引してきた輸出が落ち込んで外需の伸びが大幅なマイナスになったうえ、内需も企業の設備投資が冷え込んだ。
金融危機の発信源である米国向け輸出に依存した自動車や半導体などが軒並み大打撃を被って、設備投資を一斉に手控えた。個人消費も雇用や賃金削減が響いて振るわなかった。内外需とも総崩れ状態といっていい。
しかも、底はまだ見えない。民間エコノミストの間では、続く〇九年一−三月期も大幅なマイナス成長になるとの予想が多い。先の先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)も「世界経済の厳しい減速は〇九年の大半を通じて続く」と悲観的予想を示した。
現在は「百年に一度」の危機といわれているが、これからが本番とみるべきだ。街を歩くと、レストランなど閉店が増えてきた。輸出依存型だけでなく内需関連の企業も大幅に業績が悪化しそうだ。失業率も上昇せざるをえない。
物価も下がる。すでに一月の国内企業物価がマイナスに転じており、消費者物価もいずれマイナスに逆戻りしそうだ。
マンションの大幅値下げなどは家計に朗報だが、経済全体としてみると、デフレは売上高と利益の減少を招き悪影響が大きい。
異常な景気崩落下では、民間部門のがんばりにも限界がある。企業は生き残りに精いっぱいで、自らの無駄と非効率をそぎ落とさねばならないからだ。政府と日銀の役割が一層重要になる。
まず日銀は一段の金融緩和に動くべきだ。いま、収益はそこそこなのに資金繰りに窮している企業が非常に多い。
日銀はコマーシャルペーパー(CP)買い入れに踏み切ったが、肝心の金融政策本体の対応が鈍い。ゼロ金利、さらに量的緩和の復活を検討すべき段階である。
一方、政府も環境関連の投資促進や学校耐震化など追加景気対策を具体的に検討すべきだ。前例にこだわっている事態ではない。
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