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【主張】マイナス成長 もろさ克服する対策打て
内閣府が発表した昨年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比3・3%減、年率換算で12・7%減少した。第1次石油危機以来約35年ぶりの大幅な落ち込みである。
昨年9月の米証券大手のリーマン・ブラザーズ破綻(はたん)後の販売減、輸出減、円高の三重苦で、自動車や電機など日本経済を牽引(けんいん)してきた輸出産業を中心に総崩れだ。業績の悪化は企業の雇用調整を強め、これまで景気が大きく崩れるのを防いできた個人消費も落ち込んだ。企業部門、家計部門が不振の連鎖を引き起こしている状態が浮き彫りになった。
これに対して危機の震源地である米国の同期のGDPは年率3・8%の減少にとどまった。なぜ日本はこんなにショックに弱いのだろうか。政府はこの疑問を踏まえて、短期と中長期の経済対策を行わなければならない。
短期ではまず、政府・日銀による企業の資金繰り支援とともに今年度の第2次補正予算と来年度予算を早期に成立させて前倒し執行する必要がある。
また、失業の急増に備えた雇用保険の適用拡大など安全網の強化とともに、職業訓練を通じて技術を高め次の職探しにつながる効果的な再就職支援が重要だ。
さらにこうした短期の対策の延長上に日本が持続的に成長するための中長期の戦略が必要だ。日本は長年内需主導型経済への転換をめざしてきたが、いまなお輸出依存の度合いが強い。産業構造の転換が必要である。
それには歳出配分の大胆な見直しや規制緩和が不可欠だ。医療、農業、教育、エネルギーなど次の景気回復につながりそうな成長産業を見極めて政策を集中しなければならない。
企業トップへの注文もある。そろって過剰に萎縮(いしゅく)してはいまいか。不安心理は分かるが増幅すればするほど経済全体は縮小するだけだ。中長期の視野に立って経営資源を集中すべきだ。例えば米国の環境分野の投資で雇用創出を狙う「グリーン・ニューディール」にあわせて日本の環境技術を売り込むチャンスでもある。
折しも先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)閉幕後の記者会見で中川昭一財務相がろれつの回らない受け答えを見せたのは極めて残念だ。危機を認識していない景気対策では困る。それを政府は肝に銘じてほしい。