前期比3・3%減、年率換算で12・7%減。2ケタマイナス成長は35年ぶり。昨年10~12月の実質成長率は、当初予想を上回る悪さだった。9月のリーマン・ショックの影響がフルに出た初めての数値だが、年率での2ケタ減は異常事態だ。これで昨年4~6月期から3四半期連続のマイナス成長だ。
こうした経済情勢の急速な悪化への対処策として、自民党は20兆~30兆円規模の追加経済対策や補正予算の検討に入った。
世界経済が底の見えない金融・経済危機下にあることは間違いない。日本もその渦中にある。では、ひたすら財政出動すれば、経済は立ち直るのか。限りなく予算をつぎ込むことができれば、目に見える効果は出るだろう。それには財政破綻(はたん)やインフレを覚悟しなければならない。政府紙幣もそのリスクが大きい。
いま、政府の最重要課題は景気の底割れ阻止だ。そのため、まず、実体経済の十分な分析が不可欠だ。
2ケタマイナス成長の主因は輸出の大幅な減少である。従来の米国向けのみならず、アジア向けも急減し、マイナス幅を拡大させた。ともに、米国景気の減退から発している。
ここで、想起しておかなければならないことは、この10年余り、米国の好景気はIT、住宅のバブルに依存していたことだ。今後は、環境バブルでも起きない限り、世界はこれまでのような好況は謳歌(おうか)できない。
日本の国内総生産に対する輸出入比率(名目)は96年には20%に達していなかったが、08年は約35%まで上昇している。その分、輸出入のバランスが崩れれば経済に過度の影響が表れる。しかし、貿易黒字に頼る経済は脆弱(ぜいじゃく)だ。
外需頼みの構造は内需も不安定にしている。最近の生産の急激な落ち込みや設備投資の下落が象徴的だ。これまで、踏みとどまってきた個人消費が減少に転じたのも、輸出産業の業績悪化の波及が大きい。雇用情勢の悪化や賃金減が消費を抑えているのだ。
そこで、何をやるのか。
第一は、景気の底割れ食い止めの施策だ。内需の本丸である家計部門最重視の政策だ。2兆円の定額給付金のような中途半端で政治的色彩の強い政策では駄目だ。07年春以降下げ基調にあった消費者態度指数は1月、原油価格下落などで改善した。こうしたことを後押しする施策が必要だ。
円高も所得の海外流出の歯止めになっている。円高は悪いことではない。活用することが大事だ。企業も厳しい経営環境下だが努力しなければならない。
第二は、追加財政措置が必要と判断するのであれば、審議中の09年度当初予算の組み替えを急ぐことだ。この段階での補正予算検討は、本予算が景気に無力と言うに等しい。国民や国会の軽視でもある。
毎日新聞 2009年2月17日 東京朝刊