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消えるレッサーパンダ ご当地マンホール蓋、機能優先に

2009年2月16日18時11分

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写真鯖江市の日野川以西地域(レッサーパンダや眼鏡など)

写真坂井市三国町(東尋坊とみくに龍翔館)

写真敦賀市(気比の松原と灯台)

写真越前町の旧越前町域(越前がにと水仙、松、波)

写真勝山市(恐竜と恐竜の足跡)

写真福井市の旧福井市域(フェニックス)

写真大野市(国の天然記念物の陸封型イトヨと市章)

 地下を巡る下水道は全国どこでもよく似た構造だが、地上のマンホール蓋(ふた)は80年代後半、町おこしブームに乗って「ご当地」デザインが続々と登場した。だが、図柄の細かさや摩耗度合などによっては雨の日に高齢者やバイクが転倒し、集中豪雨や地震の時に持ち上がったり損壊したりする事例もあり、国やメーカーは最新の安全性能規定を満たす蓋への切り替えを勧めている。福井県鯖江市も08年度からレッサーパンダ柄の蓋の施工をやめた。

 各市町村の花や名所、特産品など独自デザインを採り入れたマンホール蓋は、下水道の普及率が30%台だった83年、旧建設省が普及率を上げようとメーカーに実用化を要請したのをきっかけに登場した。これが80年代後半の村おこし・町おこしブームで全国に広がり、県内でも各地域を象徴する様々な独自デザインの蓋が採用された。

 業界団体の社団法人日本下水道協会(東京)によると、マンホール蓋は鋳鉄製で、明治時代から約200年の歴史があり、時代とともに進化してきた。

 まず、60年代の高度経済成長による乗用車の普及とともに、普通鋳鉄からより強く軽いダグタイル鋳鉄製に改善された。道路の舗装が急速に進んだ70年代には、マンホールの枠に蓋を載せるだけの構造から、ガタつきによる騒音を防ぐ次世代の「急勾配(こうばい)受け型」構造が採用された。

 ご当地マンホール蓋は、機能とデザイン重視の「第3世代」に当たる。様々な図柄は表面の凹凸で表現されているが、スリップ防止のために凹凸の割合がなるべく50%ずつに近づくよう考慮されているという。

 しかし、98年9月に各地を襲った集中豪雨でマンホール蓋が持ち上がって下水が噴出したり、そこへ歩行者が転落して死亡したりする事故が発生。協会は翌99年、蓋の浮上・飛散やスリップ防止機能など8項目の安全性能を手引書にまとめた。さらに、04年の中越地震で液状化でマンホールが浮いたり沈下したりする例が相次いだこともあり、05年7月に規格を改定し、安全性能を厳格化。現在製造されているのは性能規定を満たす「第4世代」の蓋だ。

 車道に設置される蓋は、凸部の高さが3ミリ以下になると、スリップの危険性が高まるとされる。このため、国交省は03年6月、明確な規定がなかった蓋の耐用年数を、車道設置で15年、歩道などで30年と定めた。現存するマンホール蓋は、全国で8千種類以上、1100万枚以上あるとされ、協会は現在3割が耐用年数を経過していると推定。ご当地マンホールの大半も、2025年をピークに耐用年数を迎えるという。

 鯖江市は、08年度の発注工事から「性能規定」を満たす蓋に全面的に切り替えた。レッサーパンダ柄の蓋は摩耗が激しいものを除いて耐用年数まで存続させるが、やがて消えゆく運命にある。

 福井県坂井市も、08年度から原則的に性能規定を満たす蓋に切り替えたが、下水道課は「交通量の少ない道や観光地の歩道などでは、引き続き旧4町独自の蓋を併用していく」という。

 同県越前町は「合併前の旧各町の風情を残し、それぞれに味のあるデザインで愛着もある」と、今後も独自図柄を維持する方針だ。福井市もフェニックス柄を維持しつつ、「幹線道路には性能規定を満たす蓋を試行的に導入することも検討中」としている。(鎌内勇樹)

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