明治神宮(東京都渋谷区)の拝殿前で、まばゆいばかりに輝く白い玉砂利が枯渇の危機にひんしている。神宮が建立された1920(大正9)年以来、玉砂利が採取されてきた南アルプスのふもとを流れる神宮川(山梨県北杜市白州町)に建設された砂防ダムの影響とみられている。【沢田勇】
明治神宮によると、玉砂利が敷かれているのは拝殿前の中庭(300平方メートル)。春と秋の大祭に巫女(みこ)が神楽舞を披露する重要な場所で、参拝客は立ち入り禁止だ。玉砂利は直径約4センチ。南アルプスにある花こう岩の純白に近い美しさが特徴で、建立の際、全国の候補から選んだ。毎年取り換えられ、社殿の神々しさを保つ意味がある。
北杜市によると、戦中戦後の一時期を除き、住民有志が毎年9月ごろ採取し奉納してきた。「濁(にごり)川」と呼ばれていた川の名も72年に地元の要望で改称されたほど、住民らの奉納への思いは強い。
ところが、最近玉砂利の採取が難しくなった。採取場所は上流へ移動し、昨年は30年前より約3キロ離れた険しい山間部にある砂防ダムの下だった。適当な大きさの玉砂利を探すのにも時間がかかるうえ、上流は重機や大型バスが通れる道がないため、大量に採取しにくくなっている。
原因とみられるのが砂防ダムだ。神宮川では、59年から01年にかけて9基の砂防ダムが建設された。北杜市は、玉砂利のもとになる花こう岩が砂防ダムでせき止められ、転がらなくなったのが原因とみている。
国土交通省富士川砂防事務所は「玉砂利が枯渇することはない」と話すが、中学生の時から採取している男性(46)は「いずれ奉納できなくなるのでは」と不安を隠さない。
毎日新聞 2009年2月14日 東京夕刊