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「実は、これが本当のThinkPadなんですよ」。
革で表装されたカードサイズの小さなメモ帳(メモパッド)を取り出したのは、日本アイ・ビー・エムの大和研究所のポータブル・システムズ技術企画の岩川晃久だ。
メモ帳の表紙には、「THINK」という文字が箔押しで入っている。
「これは、かつてIBMの社内で使われていたメモパッドなんです」
表紙に書かれた「THINK」は、1914年以来のIBMの社是である。創始者トーマス・ワトソンをはじめとして、IBMの社員は常にこのメモ帳を持ち歩き考えをまとめるのに役立てていたのだ。
それが1990年代に入り、IBMが新しいノートパソコンを発売するにあたって、インテリジェンスを持ち歩くというコンセプトからブランドネームに採用されたという。もちろん、この名称を商標登録していたという理由もあるのだが、40年来の社是を冠したことからしても、ThinkPadにかけたIBMの意気込みが推測できる。
「IBMの製品はすべて、基本的に全世界の市場をターゲットにしています」
そう語るのは、PS製品モービル・コンピューティング担当の北原祐司。技術畑の岩川に対して、北原はマーケット側の担当者ということになる。
IBMでは、世界各地の研究拠点ごとに開発の分担を決めている。日本の大和研究所は、ThinkPadをはじめとしたモバイル製品の担当だ。そこで生み出される製品は、日本国内の市場だけではなく、広く世界を視野に入れている。
これには、日本に小型化の技術があったというだけでなく、日本の独自の市場性も影響しているはずだ。実際、大和研究所からは、日本独自の製品もいくつかデビューしているのだ。 |
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表紙にIBMの社是「THINK」が 入った元祖「THINK PAD」。 |