世界同時不況が現実味を帯びてきつつある中、ローマで先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が開かれた。
各国の政策責任者の協議を経て出された共同声明は、金融市場の混乱が招いた実体経済の悪化は二〇〇九年いっぱい続くとし、世界景気の先行きに対して強い懸念を示した。
その上で、追加歳出と減税を含む財政出動について「各国一斉の行動」を促し、各国の国内需要拡大や雇用創出へ政策を総動員するとした。財政出動の前倒しによる迅速な実施も盛り込まれた。また、保護主義の動きに対しては経済悪化を加速しかねないと強い警告を発した。
G7が財政出動で協調姿勢を示すのは異例だ。市場機能を重視し、民間主導の成長を目指してきた従来の姿勢を転換、各国政府の「責任」を前面に打ち出した形だ。各国が世界景気の現状に対して抱く危機感の反映といえるのではないか。
各国中央銀行の利下げなどの金融政策が限界に近づき、直接的な財政出動で世界経済をてこ入れする必要性が高まってきた結果でもあろう。
だが、日本は財政難にあえいでおり、米国でも巨額の財政出動には批判が根強い。欧州連合(EU)もこれ以上財政規律を緩めることには抵抗があろう。財政出動は各国にとって簡単ではないが、世界経済浮上のため工夫してもらいたい。
保護主義に関しても既に各国は昨年秋の二十カ国・地域(G20)緊急首脳会合(金融サミット)で貿易障壁回避を約束している。にもかかわらず米景気対策にバイ・アメリカン条項が盛り込まれ、フランスも自動車業界の支援策を発表した。日本も公的資金を活用する企業の資本強化策を打ち出している。
自国産業をまず守る意識は分からないではない。だが、経済がグローバル化した現在、貿易を阻害する過度の産業保護策は結局自国のためにもならないのは明らかだ。各国とも、産業振興と世界貿易活性化のバランスを図る必要がある。
G7は近年、無力がいわれている。しかし今回、各国が強い危機意識に基づき協調行動を約束したことは期待を抱かせる。四月にはロンドンで二回目の金融サミットが開かれるが、G7各国は無為に時を過ごすことなく約束した景気刺激策を実行に移すべきだ。日本も麻生太郎首相が景気対策で野党の非協力を言い募るばかりでは情けない。早急に打開の道を探るのが政権与党の責任であろう。
米国とロシアの人工衛星が高度約八百キロの上空で衝突し、大量の破片がまき散らされた出来事は、宇宙開発に伴うごみ(デブリ)問題の深刻さをあらためて見せつけた。衛星同士の衝突は史上初という。
高度六百―八百キロは地球観測に好適で、衛星の混雑地帯だ。日本の陸域観測技術衛星「だいち」なども飛んでいる。破片との衝突で壊れたりしないか心配される。米ロの衛星衝突後、韓国と米国の衛星が昨年九月、高度六百八十キロ付近でわずか四百三十一メートルの距離ですれ違ったことも明らかになった。
米航空宇宙局(NASA)は高度約四百キロを周回する国際宇宙ステーションや、若田光一さんが搭乗する米スペースシャトルの飛行に影響する可能性は低いとしている。だが、万一ということもある。十分に注意してもらいたい。
宇宙デブリの危険性は以前から指摘されていた。NASAによれば二〇〇七年八月段階で人工衛星の本体や破片、ロケットなど、主なデブリだけで約一万二千に上るという。今回の出来事を教訓に、対策を強化しなければなるまい。
一つはロシアが宇宙ステーション「ミール」でやった、大気圏に突入させて燃やす方法で、拡大していくべきだろう。
デブリの軌道情報を基に運用中の衛星を逃がす手もあるが、現状では宇宙を飛ぶ物体の軌道情報を統合的に管理する国際的枠組みはない。まず体制を充実させる必要がある。また、小さなデブリは監視のしようがないという大問題がある。
デブリの発生を抑えるのが基本対策だが、この面もお寒い限りだ。日本を含む関係各国が、早期に宇宙の交通事故回避のための包括的なシステムづくりに乗り出すことが望まれる。
(2009年2月16日掲載)