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この情報の最も新しい更新日は2月17日(火)です。

北朝鮮の情報 各国狙う

中国、漏洩阻止に

   躍起

政府系シンクタンク幹部拘束

(朝日 2月17日 朝刊)

[概要]北朝鮮の金正日総書記の健康状態に注目が集まる中、友好国の中国の当局が、情報収集活動を活発化させる各国の動きに神経をとがえらせている。政府系シンクタンク中国社会科学院の幹部が、北朝鮮の情報を韓国に漏洩した疑いで、取り調べを受けていることが判明した。大使館や外国メディア関係者に単独で許可なく接触を禁ずる通達を出すなど、管理を強めている。

 1月下旬に姿を消した社会科学院幹部は、朝鮮半島情勢や日中関係など中国で東アジア研究の第一人者で、中国内外のメディアに頻繁に登場していた人物。今は捜査当局に拘束され、北朝鮮情報の機密漏えいや、見返りに金品を受け取ったか調べているとみられる。

 北京では金総書記の健康不安が広まった昨年以降、各国の大使館員や情報機関による激しい情報収集活動が行われている。特に韓国は「北朝鮮の情報収集にかける要員数や経費は他国と比べてぐんを抜いている」(北京外交筋)という。昨年初めには、中国共産党対外連絡部の複数の幹部が、北朝鮮情報を韓国情報機関に漏らしたと処分された。

 中朝は、定期的に両国首脳が往来しており、中国はベールに包まれた北朝鮮の重要情報を持つと言われる。今年1月には王家端・対外連絡部長が訪朝し、金総書記と会談して注目された。2月上旬、各国からの要請を受け、党幹部が各国の大使館員を集めて金総書記の健康状態を説明した。

 この幹部は「発する言葉や指摘されている左手の動きに問題はなかった」と説明し、健康であることを強調した。だが、中国側が撮影した映像は見せず、ある外交官は「すべてを明かしているとは思えず、北朝鮮に気遣っている感じだった」と明かす。

 今年は中朝国交樹立60周年で、「中朝友好年」と位置づけられ、両国の首脳の往来が予想されている。特に北朝鮮を刺激しかねない金総書記の健康や後継者問題は、「語ることすら許されず、最も敏感な話題」(中国政府筋)といわれ、中国当局は今後もさらに締め付けを強めるとみられる。

[コメント]北京で北朝鮮情報を追っている各国の大使館関係者や情報機関員は大変だと思う。特に韓国政府(情報機関)の場合は、北朝鮮情報はメディア報道によって得ているとは絶対に言いえないからだ。北朝鮮の主要人物の周辺、通信傍受などの電波情報、中国人研究者からの情報収集、日本・アメリカの偵察活動報告など、北朝鮮情報を得る方法は多岐にわたる。それらの情報を総合して韓国は北朝鮮分析を行っている。

 そこで金正日総書記の健康回復説が、中国やアメリカからどんどん流されている。「すでに金総書記が自分で判断し、対処している」という話しである。でも私は単純に信じていない。その最大の理由は動く映像が配信されていないからである。それほど金正日が回復したというなら、撮影時期が明確にできる動く映像を公開すべきなのだ。

 ちなみに平壌を訪問して、金総書記と会談した王家端・対外連絡部長の写真だが、今回の訪朝で撮られた写真と証明できるのか。前回に撮られた写真を、髪などを増やして修正した可能だってある。中国はオリンピックの開会式で、生放送中に録画のビデオを堂々と放送する国なのである。

 今回のテポドン2の発射騒動でも、この前のテポドン発射騒動とまったく緊張感が違いすぎる。中国とアメリカの温度(反応)が低すぎるような気がする。深刻だった病から金正日が復活して、得意のミサイル発射外交を指揮しているとは思えないのだ。北朝鮮の放送で、「これは人工衛星だ。平和的な宇宙開発だ」という言葉に、緊張感が感じられないのだ。

 まだ私は金正日の健康回復説に半信半疑というより、中国とアメリカの謀略臭さを感じてならない。

ソマリア沖海賊対策

商船前後に護衛艦

4日で1回、護送漏れも

(産経 2月16日 朝刊)

[概要]防衛省が検討しているソマリア沖の海賊対策で、日本から派遣する護衛艦2隻の活動概要が15日、明らかになった。なお、アデン湾を航行する日本関係船舶は1日6隻程度とみられている。

 商船の護衛は護衛艦2隻をセットで運用し、2隻が商船を前方と後方を護衛し、全長900キロのアデン湾を2日(片道)かかると試算し、商船団の護送は最多でも4日(往復)に1回のペースとなる。燃料補給は2往復ごとにジプチに寄港させて行う。

 しかし給油による任務中断を含めると、1週間に1往復ほどのペースに落ちる可能性もある。そのため「護送を受けられない商船がかなり出てくる」(自民党議員)という危惧がでている。防衛省は護衛艦派遣の数ヶ月後になるとみられるP3C哨戒機の派遣後、護送方法に関する運用の見直しを図る考えだという。「海賊船の警戒監視をP3Cに任せれば、護衛艦1隻での護衛も可能」(海自筋)とされるからだ。

 護衛艦はヘリ格納庫を使用すれば、2隻のSH60哨戒ヘリの搭載が可能だが、海自特殊部隊の「特別警備隊」が使う特殊高速ボートを格納庫に収納するため、ヘリ搭載は各艦1機にとどめる。哨戒ヘリを使用すれば、「飛行高度によって300キロ先までレーダーの監視が可能」(海自筋)とされる。

 今回の海警行動では武器の使用が正当防衛、緊急避難に限定されている。このため海賊船が商船団に近づく前に発見し、停船命令に応じない場合は、ヘリ搭載の7,62ミリ機関銃で船団から出来るだけ離れた海域で警告射撃を行う予定だ。今回はSH60哨戒ヘリが重要な役割を担うことになる。

[コメント]先日のある新聞記事に、海賊対策で民間軍事会社(PMC)や民間警備会社(PSC)の社員(武装)がアデン湾を航行する船に同乗警備を行う場合、料金の相場は1回(片道)が3万ドル(約300万円)だと報じていた。

 まず、海賊は高速ボート(木製)数隻で襲撃をかけてくる。そのためタンカーや貨物船に乗り込むPMCの人数は2〜3人となる。一人では1か2方向からの海賊しか対応できないからである。3人なら左舷、右舷、後方から忍び寄る海賊に銃弾を浴びせることができる。(ベテランなら2人でも可能)

 PMC隊員の武器は、長射程の12,7ミリ対物狙撃銃と、M−16(あるいはAK47)自動小銃があれば十分だ。

 アデン湾で2日間乗船して、用心棒代が300万円の稼ぎである。効率よく仕事がまわれば、1ヶ月10回ぐらいの回数は商船に乗り込める。しめて3000万円である。そのうち、PMC会社が1000万円で、派遣社員(隊員)が1000万円(月給)ずつ受け取る。

 今ではソマリアの海賊はすっかり有名になったから、海賊対応のPMCには商船会社から乗船警備の依頼が殺到しているだろう。PMCは世界の特殊部隊の出身者を2〜3人で1チーム組み、その対応チームを100チーム組めば莫大な海賊特需がPMCに生まれる。

 そういえば、本日の読売新聞のベタ記事(国際面)に、米民間軍事会社大手「ブッラクウオーター」が社名を「ズィー」に変更と報じている。この会社はイラクの外交官警護業務で成長したが、一昨年9月にイラク市民を無差別射殺して、イラクの警護ビジネスを追われたPMC会社だ。今後、ソマリア沖の海賊特需に進出してくるのは間違いない。

北朝鮮

「核放棄条件」に

  失望か

クリントン国務長官

 完全・検証可能を要求

(毎日 2月15日 朝刊)

[概要]クリントン国務長官は13日、北朝鮮の核兵器計画放棄を条件に平和条約締結に取り組む意向を示したが、北朝鮮は核を保有したまま米国との関係正常化を果たす考えを強調し、柔軟姿勢を求めてきたオバマ政権に失望感を抱いている可能性がある。

 北朝鮮政権に近い関係者は「北朝鮮ではオバマ政権への期待感が高まっていたが、今回のクリントン国務長官の発言で期待熱が冷めるかも知れない」と指摘した。

 クリントン氏はブッシュ前政権と同様に、北朝鮮に完全・検証可能な核放棄を求めた。しかし北朝鮮はオバマ政権発足前、外務省報道官が談話などで、「関係正常化にしても、米国の核の脅威が少しでも残っている限り、我々の核保有の地位は変わらない」と主張。核保有国として米国と対等に軍縮会議を開き、ともに核放棄してこそ朝鮮半島全体を検証した形で非核化できるとの立場を重ねて強調していた。

 6カ国協議の次期米首席代表に就任予定のボスワース元駐韓大使らが今月上旬に訪朝した際も、北朝鮮首席代表の金桂冠外務次官は核保有国である点を強調。「オバマ政権と直接対話したい。6カ国協議は望まないが、米国との対話に必要ならできる」と述べたという。

[コメント]東京のローカルな話しで恐縮だが、昨日の土曜日(14日)、東京では気温が23度という気象庁が観測史上2月の最高気温を記録した。午後になって近くの公園にジョギングに行くと、寒い風が吹き荒れていた数日前は人影もまばらだったが、春一番の暖かさに誘われた家族連れや老夫婦などであふれていた。

 暖かい春風は人を戸外に誘う心理的な効果(本能)があることを知った。しかし、これが北朝鮮ならどうなるのか。北朝鮮で飢餓に襲われている人々は、極寒の時期に寒波が吹き荒れていれば戸外に出られない。やがて春になって暖かい春風が吹き出すと、人間の本能が目覚めて戸外を歩き出すのではないか。

 無論、第一の目的は食糧を得るために戸外を歩き回るのだ。しかし、いくら歩き回っても食糧がなければ、人々は深い絶望感や怒りの気持ちにないだろうか。北朝鮮の支配体制にとって、この春先の群衆心理ほど恐いものはない。政府が管理する食糧庫や、食糧を積んだ列車などが、飢えた人々の騒乱(暴動)を招く危険があるからだ。

 北朝鮮では石を金に変える錬金術ではなく、核兵器でアメリカから食糧・経済援助を得ることが北朝鮮の目的である。核兵器はアメリカや韓国との戦争に使うためではない。

 北朝鮮の核兵器計画の究極の目的は、”打ちでの小槌”のように、振ればいつでも食糧や経済援助が得られる”魔法の小槌”なのだ。

 そんな便利なものを求め続けているバカらしさに北朝鮮以外の国はわかっている。むろんアメリカもわかっている。しかし北朝鮮はアメリカだけは騙せると思い込んでいる。クリントン政権時代に北朝鮮は核の脅威を煽ってKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)という”打ちでの小槌”をせしめた味が忘れられないのだ。

 軍事常識のひとつに”失敗の原因は前に成功した時に生まれている”という言葉があったと思う。今になって思えば、KEDOの本当の目的は金正日に”打ち出の小槌”があると思わせることだったのだろうか。

6万トン級 2隻建造へ

中国が原子力空母

本格的、遠洋展開、狙う

(朝日 2月13日 朝刊)

[概要]中国軍が2020年以降、同国として初めての原子力空母2隻の建造を計画していることを軍関係者が明らかにした。

 中国軍関係者によると、北京で08年12月30日に軍主催の内部検討会議で、軍幹部が「海軍は09年から空母建造を本格的に始める」と説明。15年をめどに2隻の通常型空母を完成させ、20年までに運用体制を確立し、沖縄、台湾、フィリピンなどを結ぶ「第1列島線」を越え、中国海軍の沿岸海軍からの脱皮を目指す。

 これに加え、2020年以降より原子力空母2隻の建造を目指すという。これは6万トン級の中型原子力艦で、旧ソ連が建造を中断した原子力空母「ウリヤノフスク」の設計図を入手し、開発の参考にしているという。中国は将来的には日本列島からグアム島、インドネシアに至る「第2列島線」内の西太平洋海域の制海権を確保し、インド洋や太平洋戦域で米海軍に対抗することを目標に掲げている。

 1月20日に発表された中国の国防白書には初めて、「遠洋での作戦能力向上をめざす方針」と明記されたが、空母建造には触れていない。しかし、空母建造のために海軍は専門部署「048事務室」を開設。海南島三亜の亜竜湾では、弾薬などを貯蔵する地下トンネルを含め、空母の母港機能を持つ埠頭の建設に着手している。

 中国軍関係者(同氏)は、「今年から造る2隻の通常型は布石にすぎない。原子力型は建造や運用に莫大な費用がかかるが、我が国の経済発展のペースを考えれば大きな障害にはならず、さらに多くを建造する可能性がある」と述べた。

[コメント]これが今朝の朝日の1面トップである。この記事を読んだ直後の感想は、「また中国流の大ボラ話か」と率直に思った。具体的な原子力空母の建造情報は、旧ソ連が建造を中断した原子力空母「ウリヤノフスク」のカビ臭い設計図面を入手したというものだけだ。

 また旧KGBあたりの連中に一杯食わされ、中国は「ウリヤノフスク」の図面を高値で買い取り、空母搭載に必要な軍事技術やロシア製部品を高く買わされるだけの話しではないか。まさに「眉唾(まゆつば)、眉唾(まゆつば)」の話しである。

 先月(1月)に中国とロシアの軍関係者が会談し、ロシアの最新軍事技術や最新兵器の提供(有償)を再開することに合意したというのはこのことか。中国軍のお偉いさんたちは旧KGBの連中に騙されていませんか。とんでもないインチキな品を旧KGBに掴まされているような気がする。

 しかしこの記事を読んで喜んだ者たちもいる。記事の軍関係者の話しの真偽は別として、この中国脅威論でまた防衛予算が確保できる見通しがつくからだ。その国では無理やり煽った北朝鮮脅威論が消滅寸前にきている。もし北朝鮮が崩壊したら次の脅威はどうするのか。また自分たちへの無用論が沸き起こるのかという危機感にあふれていたからだ。

 これだけ中国と文化的、経済的、政治的な交流が高まれば、正面から中国軍脅威論をぶち上げることは難しかった。しかし、これからは中国が日本周辺海域の制海権をめざし、2020年以降、原子力空母を建造して「第2列島線」にまで海軍力を拡張してくると説明できることになった。

 それにしても、「軍事大国であった国は軍事大国になりやすい。しかし軍事大国の経験がない国は軍事大国には成りにくい」とはよくいったものである。中国が空母に恋いこがれる姿を見ると、中国軍はこれほど弱かったのかと改めて知らされた。

米政権のアフガン政策

大統領直属で

  再検討

ライデル氏を政策検討担当者

 に任命。

(読売 2月12日 朝刊)

[概要]ギプス米大統領報道官は10日、オバマ政権のアフガン政策の全面見直しに向け、中東・南アジア情勢に詳しいブルース・ライデル元国家安全保障会議(NSC)上級顧問をオバマ大統領直属の政策検討担当者に任命すると発表した。

 ライデル氏は元CIA職員で、現在は政策研究機関ブルッキング研究所の上級研究員。

 ホルブルック特別代表(アフガンやパキスタンを担当)やミシェル・フロノイ国防次官らとともに、軍事から復興開発までアフガン政策を包括的に再検討する。

[コメント]そのアフガンの首都カブールで昨日(11日)、タリバンが政府機関を狙った2件の自爆テロを起こし、警官や市民など少なくとも26人が死亡、55人が負傷した。12日(本日)、オバマ政権でアフガン・パキスタン問題を担当するホルブルック特別代表がカブールに入る予定だった。これがタリバン流の脅し方である。

 昨年、オバマ大統領候補(当時)がアフガン問題について初めて語り、「早い時期にイラクから米軍を撤退させ、アフガンのアルカイダ攻撃に主軸を移す」と表明した。あの時、誰がそのようなシナリオを書いたのか気になっていたが、この3人が書いたのか。

 それにしてもアメリカの政策研究機関の層の厚さと、質の高さが羨ましい。だから政権が交代できるわけである。日本と比較すれば、・・・・・・・・・・・本当に情けなくなる。これはもう政治家の質の違いではなく、政治システムの違いなのだろう。

 わたしは昨日のテロ攻撃が行われても、カルザイ政権とオバマ政権はアルカイダと無関係のタリバン勢力と和平交渉を続けると見ている。そのことに反対するアルカイダ系タリバンや、アメリカにタリバンを高く売るために、アフガンのタリバン戦争は一時的に激しくなることは避けられない。

クリントン国務長官来日

米海兵隊協定、

 17日に正式合意

普天間移転が「パッケージ」

(朝日 2月11日 朝刊)

[概要]初来日するクリントン米国務長官を迎え、17日に東京で行う日米外相会談で、沖縄駐留米海兵隊のグアム移転をめぐる協定に正式合意することになった。日米同盟の重要性を強調し、オバマ政権でも米軍再編で両国が協力することを確認する意味がある。

 協定には海兵隊のグアム移転について日本側の財政拠出の上限を28億ドル(約2500億円)と明記。米側に目的外使用を禁じ、入札で日本企業も平等に扱うなどの内容を盛り込む。

 外相会談では、沖縄にとって負担軽減となる海兵隊のグアム移転と、普天間飛行場移転が互いに切り離せない「パッケージ」であることを確認。代替施設の建設位置をめぐって地元と調整が長引いている普天間移転問題も、日米間の合意に基づいて進めることで一致する方向だ。

 日米両政府は06年5月、在日米軍再編の行程を定めた「ロードマップ」に合意した。14年までに海兵隊8千人と家族9千人をグアムに移転させることや、そのための日本の財政支援などが盛り込まれている。

[コメント]おや、と思ったのは、今回の日米外相会談を機会に、普天間飛行場移転を米軍再編と「パッケージ」にするとした点である。

 普天間飛行場の移転は1996年12月の「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」の最終報告だった。この報告書で普天間基地の代替施設建設を県内に移転さすことで日米政府が合意した。その理由は米軍再編のためではなく、普天間飛行場が市街地の中心に位置するため、航空機事故の危険性や騒音問題が深刻化したからである。そのための飛行場移転案だった。

 沖縄の米海兵隊の一部をグアムに移転するのは、まさに東アジアにおける米軍再編の一環で、米軍の前方展開戦略の変更にすぎない。普天間飛行場移転と海兵隊のグアム移転は、まったくの別物であって、あえてパッケージさせることに政治的な意図を感じる。また地元と大混乱する要因になりかねない。

 海兵隊のグアム移転は、計画表の時間がくれば、グアムに新しい基地を築いて、さっさと沖縄の海兵隊基地から移駐していく。そのための日本側が負担する額が2500億円というだけの話しだ。

 しかし普天間飛行場の代替施設としていわれている辺野古沿岸を埋めたてる新基地(V字滑走路2本付き)建設では、昨年夏に沖縄県議会選で与野党が逆転し、キャンプシュワブ沿岸を埋めたてる基地建設への反対決議が行われている。また次の総選挙では自民党の大敗が確実視されているが、もし民主党が政権を得れば、キャンプシュワブ沿岸基地建設を白紙に戻すと報じられている。ちなみにキャンプシュワブ沿岸基地建設は6000〜8000億円の建設費(全額・日本側負担)がかかるという試算がある。

 普天間飛行場の代替移転は、このまますんなりキャンプシュワブ沿岸埋め立てで片づく問題ではないのだ。それに今回のクリントン訪日で、普天間問題と米軍再編を咬ませることによって、強行突破を試みようとしている。これでは日米同盟の強化ではなく、弱体化に向かって進む可能性もある。

欧米の対策本部

与党PTが視察

ソマリア海賊の襲撃

成功率「5割→2割」

中露との情報共有 課題

(産経 2月10日 朝刊)

[概要]ソマリア沖の海賊対策を検討している与党PT(プロジェクトチーム)が9日、安全航行などを目指す国連の専門機関、国際海事機構(IMO 本部ロンドン)と欧州連合(EU)に対策本部を視察し、共同作戦や哨戒機派遣の可能性について協議した。欧米の対応は昨年12月から成果を上げ始めているが、中国やロシア艦との情報共有などの課題も山積みしている。

 EUは昨年12月の国連安保理決議を受け、ロンドン郊外の英軍常設統合作戦司令部に対策本部を設置し、EU初の海上軍事作戦を開始した。軍艦4隻を派遣、ソマリアへの世界食糧計画(WFP)の支援物資輸送や一般商船の護衛やパトロールを行い、ウェブサイトで海賊情報を提供している。

 1月29日、アデン湾でドイツ企業所有のタンカーが海賊に乗っ取られたが、タンカーは航行の事前連絡を怠っていた。一方、フランスの駆逐艦から飛び立ったヘリが海賊の高速艇2隻に威嚇射撃し、逮捕に成功した。対策本部のジョーンズ英海軍准将は「海賊の襲撃件数は減らないが、商船との連絡が密になり、作戦は成功を挙げ始めている」と語る。

 1月8日から、アラビア湾やインド洋で武器・麻薬密輸を取り締まっている米国も、海賊対策のために有志連合国との合同作戦の枠組みを作り、第5艦隊の3隻を派遣し、EUと米国の軍艦がソマリアの隣国ジブチを拠点に、情報共有役割分担を確認している。

 ソマリア沖を航行する船舶は年間約1万6000隻。昨年は120隻以上が海賊に襲撃され、現在も7隻、約120人が拘束されたままだ。今年は3隻が乗っ取られたが、14隻で海賊は撃退され、数十人が逮捕された。

 現在、欧米や中国、ロシア、インドなど約15カ国が約20隻を派遣。また国連やEU、NATOなど5機関、24カ国でつくる「コンタクト・グループ」が情報共有センターの新設を決めた。しかし情報・通信システムは重大な軍事機密で、NATO加盟国が中国やロシアの艦艇と情報を共有するのは困難との見方もある。

 米国が仕切ってきた海域に中国やロシアの軍艦が展開したことで、新たな緊張が生まれている。中国の駆逐艦にインド海軍とみられるロシア製の潜水艦が追跡され、中印関係の難しさを改めて印象付けている。

[コメント]この記事には艦艇の軍事通信について誤解があると思う。同盟国の艦艇同士は特別な戦域情報リンクで結ばれ、敵航空機や潜水艦などの戦闘情報を共有することができる。この高度な戦闘情報リンクを中国やロシア艦に接続するという話しではない。相手は海賊である。

 海賊情報に関しては、音声による無線通話で十分である。ここでは100マイル以上離れた海域から対艦ミサイルが飛来することもないし、海中の潜水艦が魚雷を撃ち込んでくる可能性もない。

 民間の船舶が航行中に海賊に襲われたら、その緊急救難信号を受信した艦船が、周囲の艦艇に「襲撃を受けた船名、その位置、海賊の勢力、襲撃の状況」などを、あらかじめ決められた専用の衛星回線やFM波無線機で通報すればいい。

 そこで近くにいるヘリ搭載の艦艇は、12,7ミリ機関銃などを搭載したヘリを発艦させて救難に向かわせる。海賊が持っている7,62ミリのAK47自動小銃の射程外から威嚇射撃を行い、降伏させる。

 日本の海自なら、海賊が高速艇で逃走を開始すれば、上空から機関銃弾を浴びせることはしないと思うが、他国の艦艇の搭載ヘリなら銃撃を加えることを躊躇わないだろう。海賊の高速艇を止めさせ、両手を挙げさせ、味方艦艇の到着を待って逮捕する。

 インド海軍の潜水艦が中国の駆逐艦を追跡するのは、中国が海賊からの保護を名目にして、ソマリア沖に中国の覇権(存在感)を確立するのを阻止するためである。むろんインド海軍の潜水艦は中国の駆逐艦をただ追跡をしているだけではない。何度も水中から模擬攻撃を仕掛て、中国の駆逐艦に挫折感(敗北感)を与えることが任務である。(インドの潜水艦はすでに何回も中国の駆逐艦撃沈に成功《模擬》しているだろう)

 将来、中国が軽空母を建造して、もし外洋に出れば、アメリカや日本の潜水艦や航空機が模擬攻撃を仕掛て、中国海軍に大きな挫折感を与えることになる。これと同じことをインドの潜水艦は中国の駆逐艦に行っている。

本日、新聞休刊日

更新を休止します

(2月9日 月曜日)

  本日は新聞休刊日です。TVのニュースをチェックしましたが緊急性のものはないようです。そこで本日は更新を休止します。

 原稿書きも週末までの2本だけで、今日はお昼のランチを食べに外出します。そのあと映画を見ようと考えています。しかし夕方5時には、おばあちゃんがディーサービスから帰ってくるので、一人の自由時間も夕方の4時半までです。

 私の仕事は土・日といった定期的な休みがありません。忙しい時は早朝も深夜も仕事です。いかに上手に休みをとるか、そんなことも仕事上大事なことなのです。

米海軍が確認

中国潜水艦 08年

  哨戒12回

過去最高、戦力拡充裏付け

(読売 2月7日 朝刊)

[概要]遠海での作戦行動が可能な「外洋型」への脱皮を目指す中国海軍が、08年に潜水艦による哨戒活動を12回行っていたことが明らかになった。05年はゼロ、06年は2回、07年は6回で、中国が潜水艦能力を着々と拡充している事実が裏付けられた。

 この情報は、米政策研究機関「全米科学者連盟(FAS)」の核専門家、ハンス・クリステンセン氏が、米情報公開法の請求で明らかになった。同氏によれば、哨戒活動を行っているのは中国が保有する潜水艦五十数隻のうち、漢級攻撃型原潜の後継として実戦配備が始まった商級原潜など、新型艦が中心とみられるという。

 またクルステンセン氏は一連の哨戒活動が「潜水艦基地から遠く離れた長距離航海で、短期の訓練とは違う」との見方を示した。将来の中国核戦力の柱となる最新型、晋級など戦略原潜による哨戒活動はまだ確認されていない。

[コメント]中国海軍に所属する海洋調査船が、日本周辺の海やグアム近海などで活発に海洋調査を行っている。これは海底地形を調べたり、潮流、水温、地磁気などを調べ、中国の潜水艦に水中の詳細情報を与えるためである。

 しかし中国の潜水艦に脅威を感じる必要はない。実は日本(海自)とアメリカ(米海軍)は、20年、30年前から海洋調査を行っており、中国の沿海や東シナ海、それに西太平洋の詳細な海洋情報を蓄積している。またこの潜水艦情報のように、中国の主要な軍港の近く海や、列島に沿った線の海底や、主要な海峡には水中聴音機や磁気探知装置を設置し、中国の潜水艦が潜航したまま通過しても探知できる能力がある。

 むろん中国海軍がそのような潜水艦探知システムを構築するためには、十数年以上の長い時間と莫大な費用が必要である。

 中国の潜水艦で警戒すべきは、ロシアから輸入したキロ級(SS 通常型)12隻のことで、今は台湾周辺や南シナ海で訓練や警戒についているが、これが本格的に西太平洋で活動を開始したら要注意である。

 海底に設置された水中聴音機や磁気探知装置は、大型貨物船や大型タンカーの下に隠れる方法で通過できるからだ。潜水艦の操艦技術が向上すると、航行中の無関係な国の大型船の下に潜り込むことも不可能ではない。これだと上空から潜水艦を探知するP3C哨戒機の追跡からも逃れることが可能になる。

 それを防ぐのは、水中の音を測定する高精度のデジタル・ソナーを開発し、貨物船と潜水艦が出す微妙なエンジン音やスクリュー音の違いを識別できることである。これは人間の聴力の限界(絶対音感)を越えている。

T72型戦車33両など

ソマリア海賊

 貨物船を解放

320万ドルの身代金授受か

(朝日 2月7日 朝刊)

[概要]AFP通信によると、ウクライナ大統領は5日、昨年9月にソマリア人海賊に乗っ取られたウクライナの貨物船MVファイナが解放されたと発表した。乗組員20人は無事で、貨物船は米軍艦に伴われてケニアのモンバサ港に向かっているという。

 AP通信によると、ソマリア沖に停泊する同貨物船から5日、銃を構えた海賊らが降り、ボートで離れた。貨物船には33台のT72型戦車や対空砲、対戦車ロケット弾を満載。ソマリアのイスラム系武装勢力に渡ることが懸念されていた。

 同海域を管轄する米海軍第5艦隊は、「身代金が支払われたとみられる」とAP通信に話した。海賊は2000万ドルを要求してきたが、ロシアのイラル・タス通信によると320万ドルが海賊に渡ったとされる。解放交渉にあたった関係者は、ケニアのナイロビから航空機で身代金を運び、4日に貨物船に投下したという。

[コメント]このウクライナのMVファイナ船が解放されたという情報を待っていた。これで米軍やEU軍による海賊村への襲撃作戦は、ロシアやウクライナの同意(支持)が得やすくなるからだ。あるいはロシアの同意を無視することもできる。

 それに海賊との身代金交渉(保険会社から依頼を受けた危機管理会社が代行)では、最初に海賊が要求した額の約10分の1に値切ることも確認された。今回、海賊に支払われた320万ドルといえば約3億円である。ソマリアの海賊ビジネスもそろそろ限界を感じてきたようだ。戦車33台など武器を満載した貨物船の身代金が3億円とは、いくらソマリアの漁師(民間人)が行う海賊でも1ケタ少ない金額である。

 それでも防衛省はソマリア沖の海賊対策に派遣する護衛艦2隻(「DD「さみだれ」とDD「さざなみ」)のため、現地調査団を8日〜20日の日程で、イエメン、ジブチ、オマーン、バーレーンに防衛省12人と外務省1人を派遣するという。しかし、今回の海賊対策派遣では、現在の国会情勢から新法制定が難しく、ならばどの判断で海自を帰国(中断)させるか出口論が出始めている。行け行けドンドンで突っ走り、泥沼に入り込んでいく今の政治に怒りすら感じる。

 日本がソマリア沖の海賊対策で、泥縄式に総合的なプランや法整備もなく、海自艦船を派遣させることは無理がある。日本の政治は太平洋戦争の失敗から学んでいないことが情けなくなる。

 しかしわずかに朗報もある。本日の毎日新聞(朝刊)が1面トップで報じているが、ソマリア沖海賊対策として、24カ国が連携して「海賊対策地域調整センター」を設立する概要が明らかになった。これは06年11月、アジアの海賊対策として日本が主導してシンガポールに設立した「情報共有センター」が構想のモデルという。私がソマリア沖の海賊対策で、日本が長期的な取り組みとして積極的に関与すべきと主張していたのはこのことである。

 「海賊対策地域調整センター」とは、海賊事犯の発生情報の共有はもちろん、取締船や航空機による警戒・監視や、被害者救助や海賊逮捕を協力して行い、海賊追跡のために他国の領海内に入ることを認める協定を行うのである。日本の海上保安庁にはそのノウハウと実績がある。

 まあ、今回の護衛艦(2隻)派遣は軍事における政府の”軽薄さ”がわかっただけで良しとしよう。どうせ海自に被害を出ることは考えられないのだから、もうこれ以上文句はいなわい。しかし海上警備行動で派遣する今回を先例としたり、自衛隊の海外派遣についての恒久法制定に活用することはやめて頂きたい。それこそ日本の平和戦略に大きな禍根を残すことになる。

 戦車を使って市街地をパトロールし、こそ泥を捕らえたからといって、こそ泥が出ればいつも戦車で市街地をパトロールする異常さに気がついて欲しい。日本の政治家は軍事と警察の違い(区別)だけはわかるようにして欲しい。

パキスタン カイバル峠

NATO向け物資

輸送車攻撃

大型トレーラー8台全焼

(毎日 2月5日 朝刊)

[概要]アフガン国境のパキスタン部族支配地域カイバル管区トルハムで4日、アフガンに駐留するNATO軍向け物資を積んだ大型トレーラ8台が武装勢力の攻撃で全焼した。トレーラーは通関手続き中だったと見られる。

 現場近くでは3日、NATO向けの物資を運ぶ道路の橋が爆破。4日に仮設ルートが整備され、一部の車両の通行が再開していた。 (神浦・・・・・下段の記事です)

[コメント]3日は橋梁爆破で、4日は検問所(通関所)への襲撃である。パキスタン領内の武装勢力(アルカイダなど)が雪解けの3月から始まる本格的な戦闘を前に、NATO軍の物資輸送路の切断を本格的に開始した。

 通常であればNATO軍の必要な物資の7割を、カラチ港などに陸揚げしてパキスタン領カイバル峠経由の陸路輸送に依存していた。それが昨年12月頃より、輸送トラックが武装組織の襲撃を受けるようになり、陸路輸送が度々中断し、NATO向け物資の陸上輸送量は半分に落ちていた。

 さらに最近は主要道路の橋梁爆破や、武装勢力の通関所襲撃で、さらに輸送量の低下は必至な情勢となった。NATO軍の焦りは深まることになる。

 ならば米軍のC−17輸送機やロシアの大型輸送機などをチャーターして、大量の物資を直接アフガンのNATO軍基地に空輸する方法があるのではないかと考える人がいるだろう。しかしそれは難しいのが現状なのだ。多少、輸送コストが高くなることは我慢しても、それではNATO軍の軍事・空輸供給システムに合わないのである。

 物資輸送には、戦略輸送と戦術輸送がある。大ざっぱに言えば、大型輸送機で拠点空港に運んでいくのが戦略空輸、拠点空港でさらに物資を分類(小分け)して各基地に空輸するのが戦術輸送である。米軍の最先端の空輸システムは戦略と戦術の垣根を取り払い、短い滑走路(未舗装でも可)で離発着できるC−17輸送機を使って、直接部隊に届ける効率化を図ったものも生まれている。しかし、まだまだ一部で試験運航である。

 アフガンにいるNATO軍は、本国からの援助物資補給を貨物船などの海路に依存し、カラチ港で陸揚げ荷分けして民間のトラックやトレーラーでアフガンに運び込む。すなわち母国からカラチまでの海路が戦略輸送で、カラチ港からアフガンまでが戦術輸送というわけである。

 NATO軍がアフガンの空軍基地で戦略物資を受け取っても、それを小分けしてアフガン各地の味方部隊に輸送する戦術輸送手段がないのだ。仮にNATO軍がトラックの輸送コンボイを出すと、まさにアフガンのタリバンに絶好の攻撃目標を与えることになる。

 アフガンのNATO軍や米軍が、陸上自衛隊のCH−47輸送ヘリの派遣を求めているのはこのためである。風が吹けば桶屋がもうかるのと同じというわけではないが、カイバル峠でNATO向け物資を積んだトラックが襲撃を受けるほど、日本に対して陸自のCH−47輸送ヘリの派遣を求める声は強まることになる。

パキスタン カイバル峠

武装勢力? 橋爆破

アフガン輸送路

 米越境攻撃に反発

(毎日 2月4日 朝刊)

[概要]パキスタン部族支配地区カイバル管区で3日、カイバル峠を経てアフガンに向かう道に架かる橋が爆破された。道路はアフガン駐留米軍やNATO軍の物資輸送路で、米軍の越境ミサイル攻撃に反発する武装勢力の犯行とみられる。

 地元当局によると、爆破された橋の橋脚は低く、川にも水流がほとんどないため、車両は川底を経由して走行できるという。しかし現場周辺には爆破されれば輸送路が途絶する大きな橋もあり、今回の爆破は、橋の爆破で物資輸送を途絶させるという、武装勢力の警告と受け止められている。

 武装勢力の輸送路攻撃は昨年夏以降、米軍のアフガン側から部族支配地域への越境ミサイル攻撃に比例して増加、昨年12月にはNATO向け輸送を行う業者団体が業務を中断している。

 パキスタン側の情勢悪化で、NATOなどは昨年12月、アフガンの北部にあたるロシアや中央アジア諸国と代替の輸送路交渉を開始し、大筋合意を取り付けた。しかしパキスタン政府幹部によると、アフガン周辺各国は武装勢力が自国への越境攻撃に乗り出すと懸念を抱き、代替輸送のメドは立っていない。

 NATOはアフガンで必要な物資の7割をパキスタン経由で得ているとされる。だがパキスタン経由のNATO物資は半分程度に落ち込み、雪解けの3月の戦闘本格化を前に、苛立ちが深まっている。

[コメント]米ソ冷戦時代に、極東ソ連軍の後方支援路を断つため、シベリア鉄道のトンネルや鉄橋の爆破作戦について調べたことがある。 その時の印象に、鉄橋は意外と少ない量の爆薬で破壊できると感じたことがあった。橋梁の構造が重い荷重を分散させ、重量物の通過ができる様になっている。だからその構造の一部を爆薬で破壊すると、橋はバランスを崩して自分の重量で自壊が拡大し落下するからだ。

 しかしトンネルは破壊が難しい。出入口付近で壁を崩し、トンネルを塞ぐことは難しくない。しかし崩れた岩石を重機で取り除けば、トンネル内部の被害はほとんどない。ガソリンを積んだタンクローリー(あるいはコンテナ)をトンネル内で燃やしても、思ったほど破壊効果が少ないと聞いたことがある。

 というわけで、アフガン北部に展開するNATO軍にとって、カイバル峠に架かる橋の爆破は深刻な事態を招くことが考えられる。そこでNATO軍はパキスタン軍に主要な橋の常駐警備を依頼することになる。また、NATO軍はパキスタン軍の橋梁警備隊のために、最新の戦場監視システムを提供することが考えられる。

 戦場監視システムとは、赤外線カメラや対人ドプラーレーダー、それにレーザー警戒装置などを組み合わせたものだ。その中には、人の足音や話し声、人の体臭、移動する時の振動などに感知するものもある。戦場監視システムの本格的な開発が始まったのはベトナム戦争の頃で、ジャングルに密かに切り開かれたホーチミン・ルート(補給路)を攻撃するためのものだった。

 今回、この橋が狙われた背景には、大きな橋はすでに戦場監視システムとパキスタン軍により厳重警備が行われており、武装勢力が近づくことが出来ず、そのため警戒が薄いこの小規模な橋を爆破した可能性もある。パキスタンで現地の輸送トッラクに便乗して、取材を行えば戦場監視システムの設置の有無はすぐにわかる。

 日本では民間警備会社が行っているホームセキュリテーなどの警備装置は、ベトナム戦場監視技術が応用されている。ちなみに日本の宅配システムは、70年代の米軍軍需輸送システムが応用されたものだ。

 そのような戦場監視システムをパキスタン軍は警備する橋の周辺に設置し、武装勢力が橋に近づくことを警戒することになる。ひと昔前なら、橋のまわりに大量の対人地雷を埋設し、武装勢力が橋に近寄れないようにしたが、パキスタン軍ならともかく、NATO軍が対人地雷を使うことはできまい。

米偵察衛星確認

北、テポドン

 発射準備

改良型の可能性も

(産経 2月3日 朝刊)

[概要]複数の政府筋から、北朝鮮が核弾頭搭載可能な長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準備を進めていることが2日、分かった。米国などの偵察衛星が発射準備とみられる動きを確認しており、発射台へのミサイル設置や液体燃料注入に時間がかかるので、1〜2ヶ月中に発射準備が完了する可能性が大きい。

 政府筋によると、米偵察衛星が北朝鮮北東部の平安北道東倉里で新たに建設中のミサイル発射基地で、複数のトラックが頻繁に出入りしているのを確認。ミサイルを格納する大型コンテナも運び込まれている。コンテナの大きさからミサイルは、テポドン2号と同等以上のサイズとみられる。北朝鮮は昨年秋までに発射施設でエンジンの燃焼実験を行ったことが確認されている。

 テポドン2の射程は約6000キロで、米国のアラスカやハワイ周辺まで到達するとみられている。今回のミサイルはテポドン2の改良型である可能性があり、改良型なら射程は1万キロに達し、米本土も射程圏に入るとされる。北朝鮮は06年7月5日にテポドン2やノドンなど7発のミサイル実験を行ったが、テポドン2は空中分解し、実験は失敗した。国連安保理は同年7月15日、全会一致で非難決議採択し、ミサイル発射再凍結を求めた。

 北朝鮮は韓国の李明博政権の対北強硬姿勢に反発を強めており、先月30日、北朝鮮の対韓国窓口である祖国平和統一委員会の声明で、「北南間のすべての政治・軍事的合意を無効化する」と表明した。

 万一、北朝鮮がミサイルを発射すれば、国際世論の反発は必至で、6カ国協議の行方にも大きな影響を与える。

[コメント]アメリカに北朝鮮と直接対話も辞さないと発言したオバマ政権が誕生したのに、何ら北朝鮮向けの発言がないので、オバマ大統領に北朝鮮の存在をアピールする作戦なのだろう。本日(3日)からアメリカのボスワース元駐韓大使ら、これからオバマ政権で対北朝鮮問題を担う米国務省元職員や研究者ら7人の特使が訪朝する。

 韓国には1月17日に北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部報道官が、「李明博政権と全面対決姿勢に突入する」と表明したが、北朝鮮軍に何ら目立った動きは見られないし、北朝鮮国内にも緊張した様子はなかったという。北朝鮮軍は燃料や食糧がないので軍を動かすことは出来なくとも、ミサイルなら発射実験をして、アメリカを通じて韓国(李政権)に圧力を加えられると考えたのか。

 日本向けの話しとしては、すでに北朝鮮はノドン(射程1300キロ)がほぼ日本全域をカバーしているので、さらに長射程ミサイルを発射しても大きな意味はない。

 それにしても、テポドン2が射程6000キロもあるという話しはだれが作ったのか。それも、わざわざアラスカやハワイまで到達するという解説付きである。06年7月に発射したテポドン2は大気圏(高度約100キロ圏)を出ることなく、数十キロの高度で空中分解している。(これ以外にテポドン2の実験データはない)

 さらに今回はその改良型で、射程が1万キロで、アメリカ本土に到達する能力があり、核弾頭を搭載できるという乱暴な解説付きである。ミサイルの大きさから単純に推測していることはわかるが、まさか北朝鮮の指図を受けて流されている謀略情報ではないかと疑いたくなる。

 生き残りに必死な北朝鮮の指導部が、対米交渉のカードとしてミサイルを組み立て、発射に成功しても失敗しても、世界から猛反発を受けるだけの話しである。これを瀬戸際外交と呼んで北朝鮮を警戒した時代もあったが、今は痛々しくて見るに堪えられない醜態である。

 ソマリアの海賊問題でも同じだったが、いたずらに架空の脅威を煽って、実体の伴わない空騒ぎはやめよう。日本は北朝鮮に毅然とした対応をとり、バカな行動にお付き合いする必要はない。

高度技術を重視、共同研究

中露軍事

  ”蜜月”再び

中国がロシアに”盗作せぬ”と

約束

(産経 2月2日 朝刊)

[概要]中国がロシアの高度軍事技術を得るため、新しい軍事協力関係構築に向け動き出した。関係筋が明らかにした。中国軍は技術水準と購買力が上昇していることを背景に、「中国が主導権を握り、これまでのような単純な兵器購入ではなく、技術導入を重視する方針だ」という。ロシアの技術で、中国軍の兵器技術水準を飛躍させる狙いだ。

 昨年12月、中露両国の担当者が北京で協議して方向性を打ち出した。ロシアの戦闘機スホイ27,スホイ30の中国での生産継続だけではなく、最新鋭戦闘機スホイ35(左の写真)の生産についても話し合われたという。

 中国はロシアの最新式対空ミサイルS400系などの購入を希望した。また中国はロシア製完成兵器の輸入を見直し、「スホイ戦闘機のように自前の生産能力を持つことが重要だ」と考え、輸送機やエンジン、ミサイルなどの技術導入を求めてロシアと折衝している。中国が「共同開発」や「ライセンス生産」を重視するのは、自主開発のレベルと領域を拡大させ、「装備水準の突破を図る」(関係筋)思惑があるからという。

 軍事専門家によると、中国の主要輸入兵器の約9割はロシア製で、ロシアも武器輸出の4〜5割が中国向けだった。しかしこの蜜月関係も06年頃から昨年にかけて変化し、07年、中国におけるロシア製兵器の輸入は最低水準になった。主な理由は中国の”盗作”にロシアが反発したからだ。

 中国はスホイ27を国内で組み立てたが、04年に100機超を生産した段階で、突然、組み立て部品の輸入を停止した上、スホイ27そっくりで、推進力が大きく新材料を用いた戦闘機「J11B」を製造したという。他にも対艦ミサイル、航空機用エンジンなどのコピー疑惑が指摘されている。

「ロシアの技術を用いて製造された中国製兵器が、低価格で売りに出され、アフリカ市場などでロシアからシェアを奪いつつある」(専門家)といい、ロシア側は強い不満を高めている。

 しかし、中国は最近、軍事技術の「知的財産権」を軸にロシア側と協議。これからは模造疑惑を生じさせず、ロシアの技術を利用した兵器をアフリカなど第3国に輸出しない約束をしたと指摘される。ロシアはこれを受け入れて、中露の新しい協力関係に向けた新段階に飛躍させる方針だ。

[コメント]中国がロシアの軍事技術を導入(コピー)して自国兵器の新技術に活用していることは言うまでもない。それは民間や大学など裾野の広い総合技術がないからである。しかし中国の民生品を含めてコピー製品には驚くべき特徴がある。まず新製品が中国でコピーされ、にせ物が登場する時間が極めて短いことだ。日本で新製品の携帯電話が発売されると、数週間後(中には数日後)には中国の店頭でコピー製品が並んでいる。その中には、新発売の日本製携帯電話よりも進んだ技術のものがあるという。それはアメリカの携帯電話をコピーした際の技術を日本製に組み込むからである。例えば、日本メーカーの携帯電話が、最新式のタッチパネルの機能を持ち、本物では考えられない高性能になっている。

 しかし部品の材質が悪く、値段は格安であってもすぐに故障すると聞いた。

 だが、中国の最新戦闘機J11など、アフリカのどこの国が買うのだろうか。故障の多発や部品の供給不足で信頼性が得られるのか。中国もそのことに気がついて、戦闘機ばかりか、ミサイルや航空機エンジンの輸出を中止することにしたのではなかと思う。逆にアフリカで需用が高い自動小銃、機関銃、PRG対戦車ロケット、地雷、軍用無線機や車両などで、十分に政治商品にすることができる。

 今の中国で、ロシアの兵器技術を導入できないことと、アフリカなどに武器を売って得られる利益(政治的な意味も)を比較すれば、ロシアの最新兵器技術を導入できない損失がはるかに大きい。ロシアも中国に武器を提供することは、アメリカやヨーロッパのロシア包囲網を無力化できる。

 再び、ロシアと中国が互いを利用(依存)する関係で、ブッシュ政権時代とは違うオバマ政権で国際環境の変化に備えようとしている。中露両国にとって北朝鮮、イラン問題は、オバマ政権で劇的に変化する可能性が高い。

   

 


※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。