【第62回】 2009年02月16日
最高裁と金融庁が放った“爆弾”
消費者金融は消滅する!?
これに対し債務者側は、リボルビングは一連の取引であり、返済のたびに発生した過払い金は次の返済に充当されるため、解約するまで時効の起算点は発生しないと主張した。つまり、契約を解除してから10年たたないと時効にはならない、また、一連の取引であるため、延々とさかのぼって返還請求できるというのだ。
今回、最高裁は、債務者側を支持する判決を下した。消費者金融側は「そもそも過払い金を次の返済に充当すると決めた覚えはない」と言うが、この判決によって今後は、20年前だろうが30年前だろうが、さかのぼって返還請求されることになった。
では、この判決が消費者金融に与える影響はいかほどか。
「影響額は想像がつかないが、確実に返還額は増える」と肩を落とす。実際、東日本信販の案件では、時効が認められなかったため、返還額は150万円から320万円に倍増。実際の交渉では、時効などを材料にして請求額を値切ることが多いが、今後はできなくなる。
次に、弁護士や司法書士による“掘り起こし”が増える。最近では、彼らの働きかけによって借金を返済し終わった完済者からの返還請求が急増している。10年以上取引のある利用者は30%以上いるともいわれており、時効の壁がなくなれば、顧客層は格段に広がるためだ。
加えて、返還時には年利5%の利息を付けねばならず、期間が長引けば長引くほど返還額は加速度的に増えることになる。
登録情報の変更で
増える返還請求
じつは、もう一点、消費者金融を追い込む話が水面下で進行しつつある。過払い金返還請求をした人を識別するためのデータベース登録の取り扱いである。
これも順を追って説明しよう。
消費者金融の利用者は、全国信用情報センター連合会(全情連)などのデータベースに履歴が登録され、返還請求をした記録も登録される。現在は債務整理と区別して、「契約見直し」と登録されている。これは、利息制限法を超えた利息を支払う契約を後で見直した、という意味である。
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