大阪府警本部に入る冬木三男容疑者(右)=10日午前9時22分、大阪市中央区、諫山卓弥撮影
大阪府警本部に入る古谷幸作容疑者(中央)=10日午前8時1分、大阪市中央区、諫山卓弥撮影
福岡南署を出て博多駅に向かう宮崎雄三容疑者=10日午前8時46分、福岡市南区、金川雄策撮影
任意同行で福岡県警南署に入る三笠フーズの宮崎一雄容疑者=10日午前7時54分、福岡市南区、金川雄策撮影
大阪府警へ移送される丸山茂夫容疑者=10日午前10時34分、JR博多駅、山本壮一郎撮影
大阪市北区の米販売会社「三笠フーズ」(破産手続き中)が汚染された工業用の事故米を食用に転用したとされる事件で、大阪、福岡、熊本の3府県警合同捜査本部は10日、同社社長の冬木三男容疑者(73)ら同社幹部らと取引先の仲介会社社長の計5人を不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で逮捕したと発表した。捜査本部は、偽装は価格つり上げによる利ざや稼ぎが目的だったとみて、詐欺容疑でも調べる。
ほかに逮捕されたのは、三笠フーズ元顧問の宮崎一雄(77)▽同社元社長秘書の古谷幸作(59)▽宮崎元顧問の長男で同社の関連会社の米卸売会社「辰之巳」元営業課長の宮崎雄三(49)▽佐賀県唐津市の米穀仲介会社「マルモ商事」社長の丸山茂夫(60)の各容疑者。いずれも容疑を認めているという。
捜査本部は事故米転用をめぐる一連の疑惑のうち、基準値の3倍の残留農薬成分アセタミプリドが検出されたベトナム産うるち米を九州の酒造会社に販売したとされる「酒造会社ルート」を容疑とした。
このルートでは、三笠フーズは「工業用のり」の原料として大手商社から福岡県の米穀販売会社を通じて購入した事故米をマルモ商事、宮崎元顧問が設立したペーパー会社「サン商事」、「辰之巳」の順に伝票上だけの取引で転売させたとされる。
一連の事故米の偽装について冬木社長は「金もうけのためだった」と捜査本部の任意段階での聴取に説明。捜査本部は三笠側がその過程で価格をつり上げるとともに、事故米を食用に偽装したとみている。これら偽装にかかわったとされる4社は、酒造会社ルートの取引で計1億2600万円を売り上げたという。
捜査本部によると、冬木社長ら5人はこの取引について共謀し、昨年1〜8月、ベトナム産の事故米を含む米896トンを酒造会社加工用のくず米を示す「特定米穀白米」などと納品書に記して九州の酒造会社6社に販売した疑いが持たれている。酒造会社ルートでは、おおむね事故米と正規の食用米を半々の割合でブレンドし、酒造会社に販売したという。
事故米の価格は三笠フーズが購入した時点で1キロあたり18.9円だったが、酒造会社に販売する時点で1キロあたり69.5〜98円となっており、捜査本部は数千万円の利ざやを得た疑いもあるとみている。
合同捜査本部は昨年9月、不正競争防止法違反容疑に加え、三笠と辰之巳が基準を超える農薬成分メタミドホスを含む中国産もち米を福岡県の米穀卸会社に食用として販売したとされる食品衛生法違反(規格基準外食品の販売)容疑でも強制捜査していた。捜査本部は今後、このメタミドホス米などの流通ルートについても捜査する。