羽生蛇村日報
羽生蛇村日報 第1報 - 終わりの始まり
訪れていただき、ありがとうございます。はじめまして、時計じかけ豊田です。
『SIREN: New Translation(サイレン ニュー・トランスレーション)』の魅力をお届けしていく当ブログ。期間限定ではありますが本日から毎日更新していきますので、よろしくお願いいたします。まあ、堅苦しい挨拶はこの辺で止めてさっそく本題に入りましょう。
と言ってもまだ『SIREN: New Translation』は発売されていません。ですので、今回は記念すべきシリーズ1作目、『SIREN(サイレン)』の解説を。ちなみに、『SIREN: New Translation』はシリーズ1作目を“異文化からの視点の導入”というコンセプトのもとに新訳した作品。つまり、1作目を知れば知るほど、より『SIREN: New Translation』が楽しめるというわけです。『SIREN』は、いまから約5年まえ、2003年11月6日にプレイステーション2用ソフトとして発売。山間部にある寒村、羽生蛇(はにゅうだ)村を舞台に、日本の風土、土着文化に根づいた恐怖が描かれ、熱狂的なファンを獲得しました。パッケージに記されていたジャンル名は“ジャパンダークサイドモダンホラー”。キャッチコピーは“どうあがいても、絶望”。テレビCMを見た視聴者から「怖い」という問い合わせが殺到し、CMが放送中止になったことは有名なエピソードです。ゲーム本編に関する情報は公式HPに詳しいので詳細は割愛しますが、ひと言でこのゲームを表現するならば「記憶に残るゲーム」ですね。そう答える最大の理由は、難解なストーリー構成に加え、謎をあえて残したままゲームが終わること。つまり、ただクリアーしただけでは物語の全貌がまったくわからないというわけです。多数の主要キャラクターの物語が群像劇方式で描かれ、特定の条件を満たすと新たな物語が展開するという“リンクナビゲーターシステム”。物語や世界設定をより深く理解できる資料的アイテム“アーカイブ”。公式HPに掲載された外伝小説“羽生蛇村異聞”。断片的なこれらの情報を入手し、理解し、読み解くことで、初めて『SIREN』の物語、仕掛け、謎が解き明かされていくのです。どうです? こんなゲームはほかにないですよね?
また、ゲームの難度が高かったことも「記憶に残るゲーム」となった要因のひとつと言えます。操作キャラクターの非力さ。それに対する屍人(しびと)の強さ。火かき棒で必死に屍人を倒しても、時間が経てば屍人は復活しちゃいます。まさに“どうあがいても、絶望”なわけです。実際、僕の周囲にもあまりの怖さ、あまりの難度の高さに、泣きながらプレイしていた人間が多数いました。そのほか、他人の視界を覗き見する“視界ジャック”システム。実在人物の姿と動き、衣装と表情を3Dモデルとして取り込んだ実写映像的手法。緻密な取材を基に作成された舞台。どれもが斬新で、どれもが挑戦的で、どれもが鮮烈に記憶に残っています。異例づくしとも言える制作スタイルだったからこそ、ほかに類を見ないリアリティーが生み出され、極上の“日本的恐怖“を描くことができたのでしょう。ゲーム好きを自称するならば、ぜひ一度は体験していただきたいオススメの1本です。
……ちなみに、『SIREN』には13人ものメインキャラクターが登場しますが、僕がもっとも好きなのは宮田司郎(みやたしろう)です。恋人を殺め、その妹も手にかけ、屍人化した姉妹を切り刻むマッドドクターっぷりには恐悦のひと言です。まあ、ちゃんと村人を救ったりもしているわけですが……。閑話休題。宮田はメインキャラクターの中でも突出した個性を発揮していますが、ほかのキャラクターも負けず劣らず見事なもの。どのキャラクターも人間臭く、彼らの個性も『SIRE』の魅力のひとつと言えるでしょう。あ、最後に蛇足ですが『SIREN』トリビアをいくつか。『SIREN』の試作時のタイトルは『呪海』。韓国版のタイトルは『死魂曲 SIREN』。欧州版のタイトルは『Forbidden SIREN』。また『SIREN』には“サイレン”という意味のほか、“セイレーン”(ギリシア神話に登場する上半身が人間の女性、下半身が鳥の姿をした伝説上の生物。ラテン語ではシレン。英語は“妖婦”という意味も持つ)という意味も。村のいたるところにあるマナ字架は、“生”という字を逆さまにしたもの。開発中に使用していた3つのサーバーの名前は“noroi”、“urami”、“tatari”。しかし、なぜかサーバー落ちが頻繁に発生。“kiyome”、“harae”、“tamae”に名前を変えたところ、サーバーが落ちることはなくなった。美耶子役を演じていた岡本奈月(おかもとなつき)さんは、『SIREN: New Translation』で引き続き美耶古役を演じている……と、まだまだトリビアは尽きませんが、キリがないのでこの辺で。あ、全篇を通じて数多くの映画や小説、マンガやドラマへのオマージュが垣間見れますので、それらを捜すのも楽しいかと。
では、名残り惜しいですが『SIREN』および『SIREN: New Translation』のイメージソング、『奉神御詠歌(ほうしんごえいか)』の歌詞とともに今日はお別れします。明日は『SIREN2』の解説をお届けいたします。ではまた明日。
『奉神御詠歌』
敬い申し上げる 天におわす御主
光り輝く御姿で 現れ給う
ぐるりや三つの御印を持って拝み奉る
一つや二つ三つを過ぎたれば天の理
我等父母の咎に罰を 加え給う事無し
我等の弱きありまを 限り無しものにし給う
御主のおいでます 楽園をお連れ給う
(コーラス)
ほってろですきりんとすぴりとさんとのみつのびりそんな
ぐるりやぐるりやぐるりやぐるりや
きりとやえれんぞきりとやえれんぞきりとやえれんぞ
作曲:冷水ひとみ
作詞:佐藤直子
(C)2003 Sony Computer Entertainment Inc.
時計じかけ豊田
ファミ通プロジェクトマネジメント編集部デスク。長くてよくわからない部署名だが、週刊ファミ通および姉妹誌にて"ファミ通チョイス"というマークが入っているタイトルを専属で担当する遊撃隊的部署のことらしい。編集歴10年。頭のネジがちょっぴり抜けている『サイレン』シリーズが三度のメシより好きな編集者。