内閣府が16日発表した08年10~12月期の国内総生産(GDP)速報によると、物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整値)は、前期(7~9月期)比3・3%減、これが1年間続いた場合(年率換算)で12・7%減と3四半期連続で減少した。2けたマイナスは、第1次石油危機時の74年1~3月期(3・4%減、年率13・1%減)以来、戦後2度目。深刻な金融危機と世界景気悪化で輸出が戦後最大の落ち込みとなり、個人消費も減少。内外需の総崩れが鮮明となった。09年1~3月期も大幅なマイナス成長の見通しで、日本経済は戦後最悪の不況に陥ろうとしている。
実質GDPの3四半期連続の減少はIT(情報技術)バブル崩壊後の01年4~6月期から10~12月期以来、7年ぶり。08年の実質GDP成長率は0・7%減となり、99年(0・1%減)以来、9年ぶりのマイナス成長となった。
10~12月期は、輸出が前期比13・9%減と2四半期ぶりに減少に転じ、減少幅は75年1~3月期(9・7%減)を上回った。自動車、電子部品、建設機械などを中心に米国、欧州連合(EU)、アジア向けがすべて大幅に減少した。外需依存で輸出との連動性が高まっている設備投資は5・3%減と4四半期連続の減少で、マイナス幅は加速度的に拡大している。
昨年夏にかけ、急激な物価高で打撃を受けた個人消費は、物価上昇が一服した昨秋以降も、実質賃金の減少や雇用不安の追い打ちで0・4%減とマイナスに転じた。自動車、家電、航空旅客輸送、衣服などの落ち込みが大きかった。輸出から輸入を差し引いた外需寄与度は、輸出の記録的減少によりマイナス3・0%と過去最悪に、内需寄与度もマイナス0・3%だった。
物価変動の影響を含み、生活実感に近い名目GDPは前期比1・7%減(年率換算6・6%減)で、98年1~3月期(2・0%減、年率換算7・7%減)に次ぐ、過去2番目のマイナス幅となった。【尾村洋介】
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■解説
08年10~12月期の実質国内総生産(GDP)の実質成長率が前期比12・7%減(年率換算)を記録したことは、世界的な金融・経済危機が、輸出頼みの成長を続けてきた日本経済に与えたダメージの大きさを印象付けた。10~12月期は先進国はそろってマイナス成長に沈んだが、金融危機の震源地の米国(3・8%減)のほか、ドイツ(8・2%減)など欧州連合(EU)諸国と比べても、日本の落ち込みぶりは突出している。
日本経済は「欧米に比べ金融面の危機の影響は限定的」とされてきた。しかし、実体経済への影響はむしろ大きい。00年代前半以来、世界的な好景気を先導してきた米国の消費バブルが、住宅価格の下落と金融危機で崩壊。米国向けを中心とした外需の急減で自動車や電機など日本の有力企業が一気に経営不振に陥ったからだ。中国経由を含め米国への輸出依存度が高い日本は、外需の縮小に直撃されたうえ、それを穴埋めする個人消費など内需にも乏しかった。過剰在庫・人員を抱えた企業は生産縮小と人員削減を加速。失業増が家計消費を冷え込ませ、それが企業活動をさらに萎縮(いしゅく)させる「負のスパイラル」で、日本経済は「底の見えない不況」に直面している。
1~3月期の実質成長率も大幅なマイナス成長が見込まれ、08、09両年度が戦後初の2年連続マイナス成長に陥る可能性が高い。戦後日本で年度ベースのマイナス成長は4回だが、09年度は、不良債権が拡大した金融危機時の98年度(1・5%減)をしのぐ過去最悪のマイナス3%近い落ち込みが予想されている。しかも、02年からの「輸出バブル」の回復期にGDPの16%まで増えた輸出の復活は望み薄だ。市場では100万人を超える失業者が発生し、完全失業率は6%に達するとの厳しい見方も出ている。【尾村洋介】
毎日新聞 2009年2月16日 東京夕刊