キヤノンの工場建設をめぐる脱税事件で、法人税法違反容疑で東京地検に逮捕された大賀規久容疑者(65)が経営するコンサルタント会社「大光」(大分市)に、大分県が県有地を地価公示価格の四分の一の安値で売却していたことが12日、分かった。地方自治法では県有地の売却先は競争入札による決定が原則だが、県は大光を「誘致企業」扱いにする特例措置を取り、随意契約ですませていた。
キヤノン関連工事をめぐっては、受注した大手ゼネコン鹿島をはじめ各方面に、大賀容疑者の強い影響力が指摘されているが、大分県も例外でなかったことが浮き彫りになった。
問題の土地は、大分キヤノンマテリアル大分事業所(大分市)の道路を挟んで北西に隣接する約1.8ヘクタール。
関係者によると、大賀容疑者が2006年3月、県庁を訪ね、「キヤノン従業員用の宿泊所や研修所を建てたい」と県幹部に要請。県は07年1月9日、県土地開発公社を通じ、大光に「県有地に進出する企業」として、用地を約1億3900万円で売却した。
価格は一平方メートル当たり約7700円。当時の周辺の地価公示価格は3万800円だった。大光はその後、6棟の従業員寮を建設し、管理・運営している。
大分県によると、誘致企業の従業員寮用地として県有地を別会社に売るのは前例がない。大分市内の企業である大光を誘致企業扱いにしたのも「極めて異例」という。
これについて、県側は「従業員寮の建設はキヤノンの進出効果を高めて公益につながるため、公募しなかった。売却価格は、不動産鑑定を基に算出した適正な額だ」と説明している。また当時の県幹部は「大賀容疑者がキヤノンに影響力のある人物と分かっていた。売却先が大光では駄目だという議論はなかった」としている。
=2009/02/13付 西日本新聞朝刊=