ホストクラブの店員に大量の酒を飲ませて死亡させたとして、傷害致死罪に問われた浜松市中区上浅田2丁目、元ホストクラブ店員藤本敏晃被告(31)の判決公判が16日、静岡地裁浜松支部であった。北村和裁判長は「飲酒の強要は傷害にあたる」との判断を示し、懲役3年6カ月(求刑懲役5年)を言い渡した。
イッキ飲み防止連絡協議会事務局によると、飲酒を強要して傷害致死罪に問われ、有罪判決が出たのは全国初ではないか、という。無罪を主張してきた弁護人は「控訴する可能性が高い」と述べた。
判決によると、藤本被告は昨年5月7日午前2時50分ごろ、同区肴町のホストクラブで、店員の柳田仁さん(当時25)=同区神明町=に「うちの従業員をけいれんするまで飲ませた」などと怒鳴り、強要して約23分間に1リットルを超える焼酎(20度)を飲ませた。柳田さんは急性アルコール中毒で心肺停止状態になり、1週間後に脳障害で死亡した。
柳田さんは昨年2月、勤務先の店長らと藤本被告の店を訪れ、同店で働いていた元同僚の店員にボトル1本分の焼酎を飲ませた。藤本被告は、報復目的で仲間7人と柳田さんの店に押しかけた。
北村裁判長は「客として来店した藤本被告からの飲酒を断ることは困難だった」とし、「強い脅迫を受けた被害者は、短時間に多量の飲酒をするほかないという精神状態に陥った」と判断。藤本被告の威圧的な行動は、直接暴行を加えていなくても傷害の実行行為にあたる、とした。
アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)運営委員の浅野晋弁護士は「高濃度のアルコールを大量に短時間に強制的に飲ませた事実が、傷害の実行行為にあたると認定されたと思う。今後、被害者側からの訴えが増える可能性がある」と分析した。